子育て改革のための共同親権プロジェクト 基本政策提言書: 2021年民法改正★男女平等の子育ての幕開け 〜親子生き別れ!? ひとり親の貧困!? 家庭から社会を変革しよう

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「父親の子守<夏姿><冬姿>」*

江戸の街角や店内で、はだかのキューピッドが、これまたはだかに近い頑丈そうな父親の腕に抱かれているのを見かける。これはごくありふれた光景である。父親はこの小さな荷物を抱いて見るからになれた手つきでやさしく器用にあやしながら、あちこちを歩き回る。ここには捨て子の養育院は必要でないように思われるし、嬰児殺しもなさそうだ −オールコック「幕末日本滞在記」

* オールコック 「大君の都」 1863年代 / 国際日本文化研究センター データベースより 本書では、単独親権制度が生み出す社会問題のありさまを明らかにし、男女がともに子育てに関わることができる政策提言をする

作成にあたっては、離婚時の親子分断や養育費の不払いといった問題を超え、本来のあるべき子育て、働き方といった視点から見た政策提案や、時代の流れから見た分析も行った。 本書を男女平等な共同親権社会実現のためのツールとして活用いただきたい。

はじめに ~本プロジェクトの背景と目的~

本プロジェクトは、子育てに関わる親子分断、ひとり親の貧困、性別役割分担といった現在生じている数々の問題を解決することを目的としている。これらの問題を生み出す根源は、民法の単独親権制度である。私たちは、この単独親権制度から共同親権制度への転換を提案する。この提案は、日本社会の子育てのモデル、ひいては現代日本の「家族」と「社会」の関係を抜本的に変え、すべての人にとって日本を暮らしやすい国にするものである。

現代の子育て像

今から約35年前の男女雇用機会均等法から続く女性活躍推進の流れの中で、女性も男性も社会に出て働くことが求められる一方で、国が提唱した「働き方改革」や「男性育休推進」により男性も女性も家庭で子育て・家事などをすることを求められている。この結果、子育て世帯に占める共働きの割合は今から40年前の1980年当時の3分の1から、2019年では3分の2に増加した。このように現代は男性も女性も分け隔てなく仕事も子育て・家事もすることが求められている。

その一方で、現代は3組に1組が離婚する時代である。日本は離婚後子の親権を単独とするよう法が定めており、裁判所は93%もの割合で女性が親権を持つ決定をしている。つまり、実質的には女性のみに子育てをさせる責任を国が負わせている。この結果、婚姻中に子育てに真剣に取り組んだ男性であったとしても離婚により、法制度上親ではなくなり、その一方で多数のシングルマザーが生まれている。

国が生み出した親子分断

このプロジェクトを推進するメンバーの中には、ある日突然、子どもを元妻や元夫から連れ去られ、子どもと会えなくなっている親も多くいる。子どもの立場で言え

ば、10〜20代の子どもたちが生き別れたパパやママを探したい・話したいと

Twitterで投稿し、またFacebookで見つけたパパやママと10年、20年ぶりに再会した美談がTVでも放送されている。インターネットが普及し、地球の裏側の離れた人とコミュニケーションができる時代においても、本人たちが望んでいない非人道的な“親子分断”が起きている。

この理由を調査すると、単独親権制度をはじめとした家族に関する日本の法制度が、大きく立ち遅れていることが根本原因であることに行き着いた。多くの国の家族法制が単独親権制度から共同親権制度へと転換を遂げ、親同士の関係によらず子どもを分担養育しあうことを国が後押しすることが当たり前になっている。ところが、先進国では日本だけが単独親権制度を維持し、今日も日本全国の家庭裁判所が親子の分断を当たり前のように行っている。

そして、この国の家族に関するシステムが変わってこなかったのは、家族のあり方だけでなく、社会のあり方を変えられてこなかった、更には「家族」と「社会」との関係を変えることができなかったという考えに至った。大人たちは死に物狂いで働き、子どものいる家庭では社会から後ろ指をさされないように、必死で子育てをしている。共働きが増える中で子どもたちは、保育園・小学校・学童・塾といった子育ての外部機関で過ごす時間が長い。限られた親との時間も、親は仕事で疲れ切っており時間に追われる姿を毎日のように見ている。そして、様々な理由から両親が離婚した場合、子どもたちの多くは一方の親とは会えなくなる。会社や職場のために家庭を犠牲にし、とにかく生産性を上げて経済的に豊かになることを目指してきたこれまでの社会で、そのことが疑問に思われることはなかった。

現在の単独親権制度をはじめとした家族に関する法制度は、国のため、社会のために男は外で働いて金を稼ぎ、女は家庭を守って子どもを育てるという性別役割分担をベースとした価値観のもとに作られている。このような価値観に支えられた家族法制度の一方で、国は女性活躍推進や働き方改革を提唱し、その歪みが“親子分断”となって現れたのである。

私たちが望む法整備

本プロジェクトは、一人一人が必死で稼ぎ、仕事をするために家庭生活を犠牲にすることはない日本に転換するための法整備を目指している。時間的にも経済的にも、そして心の余裕もある中で、ほどよく仕事も家庭生活も送る。子どもを産み育てることは、自分のキャリアの足かせでも社会的な義務でもなく、親になることは仕事とともに自分の人生を豊かにしていくための選択である。

働く時間と場所の自由度を広げれば、家庭で子どもと過ごす時間も、自分の時間も持てる。夏休みもたっぷり子どもたちと過ごす時間を持てる。PTA活動や先生との面談に夫婦とも関わる。職場は各々の家庭や子育てのあり方を尊重し、単身赴任や残業のしわ寄せを家庭に押し付けることもない。子どもが熱を出したら年休か在宅ワークに切り替えるのは当たり前。このようになれば、子どもは両親からもっと時間をかけ愛され育つことができる。

また、たとえ親の子育てが多少型破りでも、周囲は「変わっている」とまゆをひそめるのではなく、「おもしろいね」と笑顔を見せる。いろいろな家族のあり方があることは、多様な人が社会で活躍できる機会を増やす。自分たちが稼いだお金が子育て世帯に多く使われることに不公平感を持つよりも、仲間として支えあう。

子どもを持った親は、親どうしの関係が良くても悪くても、子どもとのふれあいの時間を十分持ち、父や母としても成長していくことを楽しめる。

そんな子育てのあり方を支える法整備を私たちは望んでいる。

コロナウイルスと子育て

折しも今年2020年は、コロナウイルスの蔓延によりいくつかの子育てに関わる問題が明らかになった。緊急事態宣言が発出された際、ひとり親家庭の看護師が子どもを保育園に預けることが出来ず、医療現場で人手が足りないにも関わらず出勤を見送らざるを得なかった。非正規として働くひとり親の解雇・雇い止めなどを起因として、ひとり親家庭の貧困が問題として取り上げられた。こういったひとり親家庭の問題を生み出しているのが、正に単独親権制度である。

その一方で、コロナウイルスは私たちに機会も与えた。リモートワークが進み、日立、富士通、資生堂、NTTといった大企業が、在宅勤務継続を発表。カップルによっては夫婦とも家庭で子育てをしながら仕事をすることが当たり前になった。

更に、リモートワークが前提となったことで生活維持コストが高い都市に住む必要が無くなり、子育てのために地方に移住する方の記事も見受けられるようになった。ただ、在宅勤務が当たり前になったことで、新たな夫婦の問題として「コロナ離婚」なる言葉も生まれた。

性別役割分担の歴史と法との因果関係表紙裏の絵は明治時代初期、今から約160年前に初代駐日総領事オールコックが残した男性の子育てに関わる資料である。また裏表紙裏は江戸時代の女性が仕事をする姿を示している。このように「男性は仕事、女性は家庭」の価値観は、日本人の伝統的な家族観ではない。

近代日本の発展を果たすために、富国強兵を進める約130年前の明治民法から端を発し、産業革命により職場と家庭が分離したことから、男性が働き女性が子育て・家事を担うという性別役割分担が一般的になった。昭和の高度成長期を通してそれが進み、さらに第3号被保険者や配偶者控除といった専業主婦優遇の法律が拍車をかけた。

つまり、性別役割分担の価値観は「時代」を支える「法」が生み出したのであり、「時代」が変われば価値観も変えていく必要がある。そして、その「時代」にあった法整備が我々に求められている。各国も男女平等の時代を支えるため、共同親権制度に転換を進めてきた。このため、今価値観を変えるのに必要なのは、私たちが「法」を変える「意志」と「行動」だけである。

●ReDesign Family Law/家族法のリ・デザイン

子育て世代の私たちは、今まで、明治以降の国や社会のあり方に家族や個人を合わせ過ぎたのではないだろうか。そんな家族のあり方や社会のあり方を変えていく切り札が共同親権である。父親も母親も平等に子育てに関わり、パートナーと共に自分らしい家族の姿を作り上げ、そのうえで社会と繋がっていく。男女とも一人ひとりが真に活躍できるようになれば、もっと豊かな社会になるだろう。

私たちは今こそ、性別役割分担を前提とした単独親権制度から、男女平等を前提とした共同親権制度に転換し、家族法をリ・デザインすることを提言する。

目次

表紙

はじめに ~本プロジェクトの背景と目的~基本政策提言

数字で見る単独親権制度の問題まとめ

1章 親子分断と単独親権制度

1.1 親子分断の現状

1.1.1 離婚と親子分断

1.1.2 強制力が弱く低頻度の面会交流

1.1.3 子の連れ去り・親子分断を追認する裁判所と警察・行政・学校

1.1.4 増加し長引く子の監護の紛争・終わりなき係争

1.1.5 各国から日本に対する非難

1.1.6 親子分断が子どもと別居親に与える心理的影響

1.1.7 当事者による切実な声

1.2 親子分断のメカニズム

1.2.1 親権と単独親権制度

1.2.2 法的手続き化されていない別居と子の連れ去り

1.2.3 親子分断のメカニズム

1.3 親子分断を抑止する理想的な姿 −共同親権−

1.3.1 国際標準は共同親権制度

1.3.2 共同親権制度下の国での別居・離婚後の親子の時間

1.3.3 親子分断を防止するために日本で必要なこと

2章 単独親権制度と更なる問題

2.1 政策矛盾を起こしている単独親権制度

2.1.1 単独親権制度の歴史

2.1.2 単独親権制度により国が性別役割分担を生み出す

2.2 単独親権制度が生み出している更なる問題

2.2.1 コロナ禍で浮き彫りになった単独親権制度による問題

2.2.2 離婚後のシングルマザー・子どもの貧困、養育費の不払い

2.2.3 養育費の目的外流用ビジネス

2.2.4 増加する未婚の母・年間16万件にのぼる人工妊娠中絶

2.2.5 事実婚のカップルの子育て

3章 共同親権制度の期待効果

3.1 「社会」中心で、単独親権制度により翻弄させられる現代の「家庭」

3.2 「家庭」と「社会」の関係を再構築

3.2.1 共同親権により作り上げられる「家庭」の姿

3.2.2 共同親権により作り上げられる「家庭」と「社会」の関係

3.2.3 共同親権制度の国家的効果

4章 基本政策提言内容

4.1 「制度」と「性別役割分担」の因果関係

4.2 基本政策提言内容

4.3 よくある質問と私たちの考え

資料集

資料1 共同親権年表 〜別居親の運動、共同親権運動のこれまで〜

資料2 共同親権に関わる「子どもの権利条約」と「子どもの権利委員会勧告」

資料3 EU議会日本の親による子の拉致の禁止を求める決議プレスリリース

資料4 民法の家族法・共同親権関連条文

活動支援のお願い

基本政策提言

私たちは男女平等の子育てを実現するために、次の提言をする。

上記大提言の実施に合わせ、以下基本政策を進めることを提言する。

①親の権利と養育責任の明確化 子どもが両親から愛される権利の保障

②婚姻関係と親子関係を切り離し男女平等の子育てをする法改正・ ルール整備

③男女平等の子育てを実現する司法・行政の体制・運用整備

④行政機関における、親権状態による差別禁止の法整備

⑤ライフステージごとの生命、親の権利・責任、子どもの権利教育の義務化

⑥スキーム監視・施策提言・実行権限を持つ、省庁横断組織の設立

こんな状態で子どもを産みたいですか? 結婚したいですか?−





今もまだ日本で実際に起きていること−





1.1 親子分断の現状

本章冒頭のような親子分断は、インターネットが発達し、離れた方といつでも連絡をとれる時代になったにも関わらず、日本で当たり前のように起こっている。こういった親子分断に関する実態、各国の状況及び日本に対する非難、当事者による切なる声を本節では紹介する。

 1.1.1 離婚と親子分断

3組に1組が離婚すると言われている。これは50年前の4倍。
単独親権制度により年間21万人の子どもが片親を失う。
離婚後に親子が会えているのはおよそ3割。
年間14.6万人、1日400人の子どもたちが片親と生き別れになっている。
親子分断にならなくとも、片親の親族(祖父祖母・叔父叔母・従兄弟)との関係が一切絶たれるケースもある。

2017年の人口動態統計1によれば、1年間に結婚は60.6万件、離婚は2

1万件と35%つまり、約3組に1組が離婚する時代になっている。今から50年前の1970年当時は、結婚102万件、離婚は9.5万件で9%つまり、11組に1組が離婚をしていた。このように50年前と比べ約4倍の確率で離婚をする時代に突入している。

この離婚にあたって、日本は民法819条において離婚後単独親権制度を採用している。このため離婚により子どもは100%片親を失う制度となっている。この片親を失う子どもたちは毎年21万人にも上っている。2





図1-1 婚姻・離婚の推移

図1-2 離婚件数と未成年の子どもの数の伸び

離婚にあたっての親権は、人口動態統計3によれば、2017年は母が親権者になる割合が85%を占め、更に裁判所が介在した場合を示す裁判所統計4によれば93%にも上る。このことは、女性が子どもを一人で養育せよと示すメッセージを国が発していると言える。

図1-3 離婚時の男女の親権の保持割合

更にこのうち親と子が会う“面会交流”を実施している割合は、母子家庭で29.8%、父子家庭で45.5%にとどまり5、結果年間14.6万人、1日400人もの子どもたちが片親と生き別れになっている。

また、片親と生き別れにならなくとも、別居親の親族(祖父祖母・叔父叔母・従兄弟)が、別居している子どもと会う権利は保障されていない。結果別居・離婚後に、子どもたちは片方の親の世界とも分断されることになる。祖父祖母が他界した時に、引き離された子ども(孫)を葬儀にすら立ち会えわせてもらえなかったという当事者の声もある。

  1. 厚生労働省「2017年人口動態統計(確定数)の概況」

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei17/index.html

  • 厚生労働省「2018年 我が国の人口動態」 P.35
  • e-Stat政府統計の総合窓口‐人口動態調査
  • 最高裁判所「2017年 司法統計年報 3 家事編 23 「離婚」の調停成立又は調停に代わる審判事件のうち未成年の子の処置をすべき件数 親権者別 全家庭裁判所」

厚生労働省「2016年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告」18面会交流の実施状況

 1.1.2 強制力が弱く低頻度の面会交流

別居親と子どもが過ごすことは“面会交流”と言われる。

養育費を算定する基準はあるが、養育時間(面会交流時間)を決定する基準は無い。

 裁判所が判断する面会交流時間は月1回2時間が相場。

※1979年の米国映画『クレイマー・クレイマー』では、裁判所決定「隔週末の宿泊、毎週平日1回の食事、そして

長期休暇の半分」の面会交流時間であり、40年前の米国と比しても極めて低頻度。 裁判所で合意した面会交流を守らなかったとしても、ペナルティは無いに等しい。

1.1.1で完全に親子分断とならなかった別居親が子どもとともに過ごすことは“面会交流”と言われる。皆さんはこの言葉に対してどのようなイメージを持つだろうか。面会という言葉は、一般的には病院に入院した方に会いに行く際や、社長と会う際などに使われている。デジタル大辞泉によれば面会という言葉は、

「『面会』は特別の所にいる人や地位の高い人に会うことや、また、そうした立場の人が訪ねてきた人と会うことにいう」とあり、実の子どもと会うことが特別なことに変わる。なお“面会交流”は離婚前の別居から、更に後述する配偶者による同意無き子の連れ去りを受けた時から使われる不合理な言葉である。 離婚をする際に、面会交流と共に協議されるのが別居親から同居親に支払われる養育費である。この養育費については、養育費・婚姻費用の算定表が2003年に定められ、2019年12月に改定された算定表が最高裁判所から発表6された。このようにお金の取り決めに関する基準は存在するが、養育時間(面会交流時間)を決定する基準は国から発表されていない。この結果として、家庭裁判所では公になった基準がないまま面会交流時間の判断(審判)がなされている。

図1-4 養育費・面会交流の基準策定状況

この面会交流時間について、2018年度の司法統計年報7によれば「月1回以上」が最も多く、また、子どもと宿泊すらできないケースが大半を占めている。更にこの統計上には現れないが、家庭裁判所の審判結果には「間接交流」という、子どもと別居親が会うこと禁止し、写真のみを一定頻度で別居親に送る手法がある。このように、家庭裁判所自体が公然と親子分断を進めるケースがある。

図1-5 家庭裁判所にて決定した面会交流頻度

図1-6 家庭裁判所にて決定した面会交流種別

なお、家庭裁判所を利用した当事者による、面会交流審判結果相場は「月

1回2時間」であるが、裁判所は決定した面会交流時間を公開していないので公な統計は無い。また、この「月1回2時間」の根拠について当事者の間では、家庭裁判所が斡旋している内閣府所轄の面会交流支援機関「公益社団法人 家庭問題情報センター(FPIC)」にて対応可能な時間にて判断しているとも言われており、当事者の状況は考慮されない。8

図1-7 FPICの面会交流支援内容

このような「月1回2時間」という頻度・時間が多いのか少ないのかは個々人の判断によるものであるが、米国において単独親権制度を見直すきっかけとなったとも言われている1979年の映画『クレイマー・クレイマー』が比較対象として参考になる。この映画は当時の米国における単独親権制度の理不尽さを描いたものであるが、そのような時代でも家庭裁判所で親権判断をする際の判決において「隔週末の宿泊、毎週平日1回の食事、そして長期休暇の半分」の面会交流時間を言い渡しており、40年前の単独親権制度時代の米国と比しても極めて低頻度状態にある。

更に、問題は低頻度だけにとどまらない。日本は離婚の方法として、①協議離婚と②調停・裁判離婚が定められており、①協議離婚が87.8%、②調停・裁判離婚が12.2%と協議離婚が大半を占めている。9面会交流に関して、① 協議離婚では、何の定めもなく離婚が可能であり、定めが無ければ合意を守るという概念すら存在しない。また公正証書にて面会交流頻度を合意したとしても、守らなくても罰則は一切無い。②調停・裁判離婚において、面会交流頻度を合意し面会交流が守られない場合は、履行勧告という裁判所手続きがあるが、強制力は一切無い。更に次のステップとして心理的な圧迫を与える金銭的な罰則の間接強制という手法もあるが、適用条件は限られ、適用されたとしても支払う余力が十分にある者や、逆に支払い能力が無い者からすれば心理的な圧迫にはならず、極めて脆弱な手続きである。最終的に、合意した面会交流が守られない場合は、損害賠償請求訴訟を起こすしかなく、訴訟費用を捻出できない者は泣き寝入り状態となる。結果、面会交流の合意を裁判所でしていたとしても、親子分断に陥るケースがある。なお、面会交流が実施されず困っている当事者は、「子どもに会いたくても同居親に拒否される別居親」だけでなく、「子どもに会ってもらいたくても別居親に拒否される同居親」も存在している。

このように脆弱な面会交流制度の結果、2014年の日弁連のアンケート10によれば、調停で合意したにも関わらず、44%の割合で「全く面会ができていない」状態となっている。

図1-8 脆弱な面会交流不履行の罰則

  • 最高裁判所「養育費・婚姻費用算定表」
  • 最高裁判所「2018年 司法統計年報 3 家事編 24「離婚」の調停成立又は調停に代わる審判事件のうち面会交流の取決め有りの件数  面会交流の回数等別  全家庭裁判所」
  • FPIC「面会交流援助の案内 FPICルール」
  • 厚生労働省「2009年度 離婚に関する統計」
  • 毎日新聞(2014.11.3)「面会交流:親子面会、4割実現せず 離婚・別居、調停成立でも−−日弁連調査」

 1.1.3 子の連れ去り・親子分断を追認する裁判所と警察・行政・学校

親子分断の入り口が配偶者の同意なき子の連れ去り。
親権者判断にあたって暗黙のルールが存在する家庭裁判所。
家庭裁判所の親権者判断は先に子どもを確保(子の連れ去り)した方が有利。
最初の連れ去りを容認し、連れ戻しは犯罪とする警察の運用。
子の連れ去りをされると、保育園・学校から締め出される別居親。

親子分断の入り口となるのが、離婚後単独親権制度に基づき親権者判断を行う場面である。家庭裁判所における親権者判断では、明文化されていない暗黙のルールがあると言われており、その一つに「継続性の原則」がある。この原則は、これまで子どもを監護していた親が子どもを育てていくべきだという考え方であるため、配偶者の同意なく先に子どもを連れ去り監護を継続。更に、家庭裁判所の審理は1〜2ヶ月に1回で、何回も行うため、監護の継続期間が増え、親権者の指定は子の連れ去りをした親が有利になる。

更に、家庭裁判所の暗黙のルールには「母性優先の原則」というものがある。乳幼児については,特段の事情がない限り,母親の監護養育にゆだねることが子の福祉に合致するという考えで、結果、母親が子を連れ去り、親権を獲得するケースが多かったと言われている。しかし、昨今は父親に子を連れ去られ、親権を獲得することができなかった女性当事者も見受けられる。

また、刑法224条(未成年者略取及び誘拐)「未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。」に基づき、子の連れ去りは本来犯罪であるが、警察は最初の連れ去りを容認するものの、連れ戻しは犯罪とする運用をしている。

更に、子の連れ去りに関し、保育園や学校は児童福祉法や学校教育法の規定を恣意的に解釈し、保護者から別居親を排除し、公開授業や運動会にすら参加できず、赤の他人以上に自分の子どもと引き離される別居親もいる。

図1-9 子の連れ去りを容認する司法・行政

 1.1.4 増加し長引く子の監護の紛争・終わりなき係争

家庭裁判所の子の監護に関する事件は10年で2倍に増加。平均審理期間は8.5ヶ月と顕著な長期化傾向。

コロナウイルスによる家庭裁判所の審理中止や縮小により、更に長期化することが予想される。

子の監護に関しルール無き家裁調停・審判を起因とした悪循環。

当事者によっては10年を超える、いつまで経っても終わらない係争が続く。

2019年7月19日に公表された、「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第8回) 4. 家庭裁判所における家事事件の概況及び実情並びに人事訴訟事件の概況等」11によれば、面会交流、子の監護者の指定及び子の引き渡しといった「子の監護事件」は、10年で2倍に増加している。その一方で養育費請求事件は減少傾向にある。また、概況の記載には「【図29】のとおり,この10年間,養育費請求事件等の平均審理期間は4.0月から5.1月の間で推移しているが,その他の子の監護事件の平均審理期間は6.5月から8.5月へとより顕著な長期化傾向を示している」とある。また、審理期間の分布も「審理期間が6月以内の事件の割合は,前回(64.9%)より減少して59.9%となった一方,1年を超える事件の割合は,前回(9.69%)より増加して12.49%となった」とあり、長期化していることを示している。更に、蔓延しているコロナウイルスにより家庭裁判所の審理が中止 及び 縮小していることから、2020年は更に審理期間が伸びることが想定される。

図1-10 子の監護に関する家裁審理の長期化推移

こういった子の監護事件の件数増加 及び 審理期間の長期化の理由について、報告書の中では分析が無い。報告書の中に記述12があるのは、「当事者の自主的紛争解決意欲を引き出す更なる取組が期待」と今後の課題として挙げているのみである。子の監護事件に関し裁判所が考える「当事者の自主的紛争解決意欲を引き出す更なる取組」とは一体どのような取り組みなのだろうか。司法サービスを利用する市民の立場に立ち、子の監護事件の件数増加 及び 審理期間の長期化の理由と合わせ、具体的に提示して欲しい。

図1-11 裁判所が考える迅速化の取り組み

一体なぜこのように子の監護事件の件数が増加し、審理期間は長期化しているのだろうか。明確な統計や分析は無いが私たちは次のような理由を考えている。まず時代背景として「男女共働き」「男女子育て」が当たり前となり、「男女とも子育てに対するこだわり」が醸成され、子育てに関して男女が譲れなくなってきた。そういった状況があるにも関わらず、家庭裁判所の調停や審判は明文化されたルールが無く、男女とも不満が溜まる。結果、審理は長期化し最終的には審判や裁判によって審理終結を裁判所により強制的にさせられるが、明文化されたルールも無く「親権は9割以上は女性が保持」、「面会交流は月1回2時間のみ」という結果から、不満は残り続ける。更に、裁判所における合意内容も守らせる罰則も無いため、再調停・再審理が起こされ審理件数が増加する。このような、家裁審理の悪循環が存在するため、当事者によっては当初の審理から10年を超えて何度も係争が続く方もいる。

図1-12 家裁審理長期化の要因分析

  1. 最高裁判所(2019.7.19)「最高裁判所 裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第8回) 4. 家庭裁判所における家事事件の概況及び実情並びに人事訴訟事件の概況等」
  2. 最高裁判所(2019.7.19)「最高裁判所 裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第8回) はじめに」

1.1.5 各国から日本に対する非難

 先進国では離婚後も共同親権が当たり前で、親子分断にはならない。

 配偶者の同意なき子の居所の移転(子の連れ去り)は、Parental

Child Abduction(実子誘拐)と言われ犯罪行為に当たる。

10年以上前から日本は各国から非難を浴びている。

2019年2月に国連子どもの権利委員会から勧告。

2020年7月には27カ国が属するEU議会において「日本における、国家間及び国内の実子誘拐に関する決議(European Parliament resolution on international and domestic parental abduction of EU children in Japan」が可決された

このような離婚後の子どもの子育ては各国ではどのような状況なのだろうか。米国では1979年の映画『クレイマー・クレイマー』以後、共同養育の法制度が全米に広がったと言われている。2020年現在、米国在住の方々に聞くと「日本のような親子分断はありえない。毎週や隔週で子どもが別居する親同士を行き来することが当たり前。子どもが居ない間に新しいパートナーとの時間も楽しんでいる。」といった声が聞かれる。 2020年4月に公表された法務省「父母の離婚後の子の養育に関する海外法制調査結果13」(以下「法務省24カ国調査」という。)によれば、調査対象としたG20を含む海外24カ国において、単独親権のみが認められている国はインドとトルコのみであり、その他の多くの国では単独親権だけでなく離婚後も共同・分担して子どもを養育する共同親権が採用されている。つまり、日本のように離婚により片親を失い、親子分断させられる単独親権制度は先進国の中では異例の存在である。このように日本は、国際的に見て家族法に関し、ズレがある。結果、 日本人と外国人とが離婚する際の子の連れ去りや親子分断が、国際問題を引き起こしている。特に、日本では容認されている一方の配偶者による他方の配偶者の同意なき子の居所の移転(子の連れ去り)は、各国では「Parental Child

Abduction(実子誘拐)」と言われ犯罪行為に当たる。このため、Wikipediaで

は、「International child abduction in Japan 」というトピックが掲げられており、20

00年代半ばごろから問題となっていたことが分かる。

図1-13 Wikipediaの日本の実子誘拐を取り上げたトピック

このように各国は、子の連れ去りや親子分断を起こしている日本に対して非難を続けてきたが、一向に改善されることは無かった。この結果、2019年2月に国連子どもの権利委員会14から「子どもの最善の利益に合致する場合には(外国籍の親も含めて)子どもの共同親権(共同養育権)を認める目的で、離婚後の親子関係について定めた法律を改正するとともに、非同居親との個人的関係および直接の接触を維持する子どもの権利が恒常的に行使できることを確保すること」と離婚後の子育てに関する勧告を受けた。更に、2020年7月に27カ国が属するEU議会において「日本における、国家間及び国内の実子誘拐に関

する決議(European Parliament resolution on international and domestic

parental abduction of EU children in Japan)15」が、ほぼ全会一致(賛成:686 票、反対:1票、棄権:8票)で可決16された。この決議の中には、「日EU戦略的パートナーシップ協定〈SPA〉の合同委員会を含む、ありうる限りのフォーラムでこの問題を提起するという〈欧州〉委員会のコミットメントを歓迎する17」ともあり、今後日本−EU間の経済的な問題にも及ぶことが懸念される。このEU議会よる指摘を次の図にて解説する。なお、ハーグ条約に関しても日本国内において「骨抜き」となったという文書18 19も見受けられるが、ここでは説明を割愛する。

なお、EU議会の決議を受け、2020年7月10日の茂木外務大臣の会見録20では、「決議が採択されたことは承知をいたしております。その上で、ハーグ条約の対象となる事案と、対象にならない事案、これで分けて考える必要があると思っておりまして、日本政府はハーグ条約の対象とならない日本国内の事案については、他の国もそうだと思いますが、国内法制度に基づいて、国籍による区別なく、公平かつ公正に対応しております。また、ハーグ条約の対象となる事案については、同条約に基づき、EU加盟国の中央当局との協力を通じて、一貫して適切に対応してきております。決議にあります国際規約を遵守していない、この指摘は全く当たらないと考えております」と答えており、現時点で日本政府としてEU 議会の非難を受け止める姿勢は残念ながら無い。

図1-14 EU議会が決議しているのは日本の国内法の問題

  1. 法務省(2020.4)「父母の離婚後の子の養育に関する海外法制調査結果」

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00030.html

  1. 国連・子どもの権利委員会(UNHCHR)(2019.3.5)「子どもの権利委員会:総括所見:日本(第4~5回)」・平野裕二(訳)

https://w.atwiki.jp/childrights/pages/319.html

  1. EU議会 決議本文(2020.7.8)「International and domestic parental abduction of EU children in Japan」 https://www.europarl.europa.eu/doceo/document/TA-9-2020-0182_EN.html
  1. EU議会 プレスリリース(2020.7.8)「欧州議会、日本におけるEU市民の親からの子の連れ去りに警鐘を鳴らす」
  2. EU議会 決議本文(2020.7.8)「欧州議会の日本の実子誘拐に関する決議を翻訳・解説 Part 1」共同親権・共同養育草の根活動(訳)
  3. 善積京子・追手門学院大学社会学部紀要(2015.3.30)「国境を越えた子の連れ去りに関する実施法-日本とスウェーデン-」

https://www.i-repository.net/contents/outemon/ir/402/402150312.pdf

  1. 加地良太・前外交防衛委員会調査室(2013)「日本のハーグ条約締結をめぐる国会論議」

https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2013pdf/20130801023.pd f

  1. 外務省(2020.7.10)「茂木外務大臣会見記録」

https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/kaiken4_000981.html#topic3

 1.1.6 親子分断が子どもと別居親に与える心理的影響

親子分断が子どもに対する心理影響で、「片親疎外症候群(片親引き離し症候群)(PAS)」と呼ばれる状態になるケースがある。片親疎外症候群は、リ

チャード A. ガードナーによって1980年代に提唱された概念で、「子どもが同居親の『別居親に対する嫌悪感や恐怖感』と病的に同一化して別居親を疎外ないし拒絶する現象21」のことを指す。また、「監護親が子供たちと別居親との面会交流に理不尽に抵抗している点について、監護親は配偶者である別居親に対する思いと、子供たちの別居親に対する思いが、別であるかもしれないということへの想像が微塵も働かないほどに、親子の境界がなくなってしまっている。こうした監護親と子供の境界のない癒着した状態は、子供の思いへの共感力の欠如であり、子供の思いを自分の思いで支配し、子供を監護親の思いに服従させてしまう行為である。これは、心理的虐待に該当する行為であり、片親疎外の病気である22」というように、心理的虐待であり病気に当たるとも言われている。柏木

/髙坂23によれば「片親疎外症候群」は議論の途中であると言われているが、

「片親疎外」状態については否定されていない。柏木/髙坂は、現在この「片親疎外症候群」のアセスメントツールを作成中とのことで、結果を期待したい。参考までに、リチャード A. ガードナーが提示24している「片親引き離し症候群の3つの段階の、症状の違い」を次に示す。

図1-15 片親引き離し症候群の3つの段階の、症状の違い(リチャード A. ガードナー)

また、この「片親疎外」状態について、当事者の視点から見ると、家庭裁判所の実務では全く考慮がされていないと考えている。当事者からは、「同居していたこの間までママと仲良くしていたのに、別居後の調査官調査報告書ではママに殴られたと子どもが言ったと書かれた」、「審理がはじまった当初は(別居する)パパに会いたいと言っていた子どもが、審理が進むにつれパパに会いたくないと言ったことで面会交流ができなくなった」といった声が聞かれる。なお、既出のとおり家庭裁判所の判断には暗黙のルールしかないため「片親疎外」状態を判断根拠に入れているかどうか、客観的に知るすべは現在無い。親子分断による影響は、子どもだけではない。子の連れ去りや親子分断を受けている当事者の集まりに行くと、男性・女性限らず、屈強な男性ですら、自らの体験を少し話すだけで涙を流すことが当たり前のようにある。当事者活動を支援するとある方が、本活動を支援するきっかけになったのも、当事者が自らの体験を話す際に、必ずと言っていいほど涙を流すことからということであった。

これに関連し、心理ケアの領域に「グリーフケア」というものがある。上智大学グリーフケア研究所25によると「『グリーフ』とは、深い悲しみ、悲嘆、苦悩を示す言葉です。『グリーフ』は、さまざまな「喪失」、すなわち、自分にとって大切な人やものや事柄を失うことによって起こるもので、何らかの喪失によってグリーフを感じるのは自然なことであります。人生にはさまざまな喪失がつきまといます。最も大きな喪失は、家族やかけがえの無い人との死別です。特に災害や事件・事故、あるいは自死など、予期せぬ形で家族と死別することは、最悪の喪失体験であり、大きなグリーフとなる可能性があります」とある。このように一般的に「グリーフケア」は“死

別”のシーンを対象にしているが、「家族の死別」と「子の連れ去り・親子分断」の両方を体験した当事者によれば、「子の連れ去り・親子分断」は「家族の死別」とは全く異なる喪失感を感じているということだ。グリーフケアの専門家によれば

「子の連れ去り・親子分断」を対象とされている方はごく一部に限られているとのことで、別居親の心理に関する研究やケアが進むことも期待したい。

最後に、当事者の中には、「養育費だけ支払っているが全く子どもに会えない」というような理由から、自死を選んでしまう者がいる。こういった当事者を一人でも減らすためにも早期に問題解決が必要である。

  • 青木聡(2011)「離婚後の親子の面会交流に関する研究」
  • 棚瀬一代(2010. 2.20)「離婚で壊れる子供たち」光文社
  • 柏木舞・髙坂康雅(2020)「別居親との交流を拒絶する「片親疎外症候群」の実態を解明したい!」

https://academist-cf.com/projects/135

  • Journal of Divorce and Remarriage, Volume 28(3/4), 1998, p. 1-21

(訳)http://amanoftolerance.blogspot.com/2014/04/blog-post_2446.html

  • 上智大学グリーフケア研究所

https://www.sophia.ac.jp/jpn/otherprograms/griefcare/index.html

1.1.7 当事者による切実な声

 男女問わず、親子分断させられる当事者。祖父祖母の立場になり、孫に会えない当事者。

 「同居親が子ども会わせず悩む別居親」だけでなく「子どもに別居親が会ってくれず悩む同居親」も存在。

 小さな子どもたちの声は拾いづらい。子どもの目線の当事者の声は Twitterから見えてくる。

ここでは、親子分断や低頻度面会交流となっている方々の声を紹介する。

親の立場として、ここでは特に母親の声26を掲載させていただく。また、片親に会えなくなった子どもたちの声を紹介したいが、小さな子どもたちの声は拾いづら

い。声が表に見えてくるのはTwitterである。Twitterで「パパに会いたい」「ママに会いたい」と検索すると毎日のように投稿されているのが分かる。子どもの立場では、2020年になって特に話題となったTwitter投稿 を紹介する。

母親の立場の声−

−30代女性/会社員/婚姻別居中1年/子ども2人

子供と会えない日々が続いています。元夫が子供を連れて別居してから、今も元夫の意向で月1回3時間しか会えていません。近距離別居で、幼児の子供も会いたがっているのに、誰も子供の気持ちを優先しようとしません。そして、反対に、別居してシングルファーザーをしている元夫は応援され、私は、子供を捨てた母だと思われています。そんなこと絶対にないのに。。。

私は今も昔も、子供を大事に育てたい、子供を守りたい、子供のピンチには、手を差し伸べたいと思っています。ママに愛されているという実感は子供にとって、かけがえのない財産であり、自己肯定力につながります。想いを伝えるために、法改正や意識改革を訴えて、そして変わらぬ子供への思いと愛情を伝え続けたいです。

−40代女性/会社員/離婚

離婚して1年経ちました。親権はどうしても譲りたくなかったですが、やむを得ない理由で元夫に指定しまし

た。子ども達の精神的負担を軽減するために子どもが母親に会いたいと言えばいつでも会える、という約束をしましたが守られていません。今は月1回、2〜3時間の近くの公園などで遊んだりはできています。離婚で子どもに寂しい思いや我慢をさせてしまっている事を思うと胸が押しつぶされそうになります。だからこそ親は協力し合って子どもの気持ちにできる限り寄り添ってあげたいと思います。離婚して夫婦は元夫婦になりますが親と子は愛情や思いやりで繋がる限り、元親にはならないのです。時代は令和です。4組(3組)に1組の夫婦が離婚している世の中です。古い考えに執着することなく、負の連鎖を断ち切り、前向きに新しい家族の形を創造する発展的な世の中になることを願います。

−30代女性/会社員/婚姻別居中

結婚当初から、夫は夫婦で決めた事も、義両親の一言で態度がコロッと変わり、気付くと義両親と3人で私を攻めたててきました。その積み重ねにより、夫婦仲は悪化。夫は私達夫婦の家族より、○家が大切な人でした。

ある日、夫、義両親が後継ぎにあたる我が子を連れ去っていきました。そしてその後、私は家を追い出されました。私は急いで弁護士を立てて、今現在裁判中です。連れ去られる時子供はママと呼んでいたのに。

私は今、夫の言いなりにならなければ子供に会えません。 今こうしている間も子供は成長しています。 子供に会いたいです。 この理不尽な世の中が一刻も早く変わる事を願っています。

−40代女性/会社員/婚姻中・長男同居・次男別居

2年前、口論の末、夫は私に暴力をふるい一人で家を出て行きました。

その後、私は一人で2人の子供を育てていましたが、子供達から父親を奪ってはいけないと子供達を毎週夫に会わせていたら、8歳の次男だけ連れ去られました。

連れ去られ後、半年間次男に会えず、その間に次男は片親疎外に陥ってしまいました。

監護者指定の審判では、監護の継続性で夫が監護者に指定されました。別居中からの連れ去りなのに違法ともされませんでした。母性優先も兄弟不分離も考慮されませんでした。連れ去ったもの勝ちです。

夫が監護者に指定されたら、月1回の面会交流も拒否されるようになり、次男に会えなくなりました。夫は13 歳の長男には親子の縁を切ると言って、次男連れ去り後から2年間全く会おうともしません。

兄弟も2年間全く会えていません。

子供のことを全く考えないような人間を監護者にする裁判所には正義はありません。 −40代女性/会社員/婚姻別居中

子どもを、親権欲しさの夫にある日突然連れ去られました。子どもとは全く会えず、音信不通です。面会交流の交渉も夫に妨害されているのに、裁判所には強制力がなく、なすすべがありません。

正に単独親権制度の弊害と思います。

子どもの立場の声−

−2020年1月のTweet 1.8万リツイート/12.6万件のいいね

死ぬまでに1回でいいから本当のお父さんに会ってみたくて、たまたま戸籍謄本

取ったのでお父さんの名前を検索したらFacebook出てきてメッセージしてみたら返事が来た。とても感動した。にしても似てないな笑

−上記Tweetのコメント

俺もお父さん探してみたけど見つからなかった… 私も名前検索した事あるけど、出てこない…

私もずっと本当のお父さんに会いたくて会いたくて、、一昨年18年振りにやっと会うことが出来、今では一緒に暮らしてます!! 早い日にお父様とお会い出来るといいですね!

 今自分は19才です。生まれてから1度もお父さんの顔すら見た事なくて高校生の時にお父さんが大阪にいる事を知り大阪に出てきました。2年経ちますがまだ会えてないです

 全く同じです。 25年間顔も知りませんでした。 私は戸籍辿ってお手紙書きました。 〇〇さんも、会えてよかったですね!!

 羨ましいです!私は、お父さんのTwitterとインスタ発見してメッセージ送りましたが、既読がつきません…いつか返事が来る日を祈ってます。

 うちは30年会えてなかった父を探したら(確か、専用の用紙と返信用封筒を、父の本籍地の役所に送り戸籍謄本の写しを送ってもらった)、前年に亡くなったと記載されていました。 ここで「親に会いたいけど行動ができない」て悩んでいる皆さんには、私と同じ後悔をしないよう、早く会いに行って欲しい…!自分も3歳くらいの時に実の父親と離れ離れになってしまった戸籍謄本で探してみたいと思います!!私も親が離婚してしまって15年会ってなかった実父と連絡が取れ年末に会いました 外から失礼します

 私も10年くらい会えていなかった父に会いたくて、名前を調べてみたりしてました… 1年前に亡くなったと連絡が来た時は心が壊れました。 やり取りできてよかったですね!!奇跡!!

 初めまして!私も両親が3ヶ月の時に離婚して音沙汰無しで生きてるかさえわからないくらいのレベルなのですが、一生に一度は会ってみたくて!FBで検索したこともあるんですけど、出てこなくて繋がれませんでした

 27年間存在もわからなくて、でも結婚を機に戸籍謄本で調べて会うことが出来ました。 そしてバージンロードも本当の父と歩くことが出来ました。 〇〇さんもお会いできて本当によかったですね

 私も同じです!でも母には父に近づくなって言われてるので私にとっては唯一の父だけどどうすればいいのか分かりません

 お初失礼します。自分も4歳まで実父の元で生活してましたが。母親の方へ引き取られ、かれこれ父と会わず24年経ちます。このツイートが流れてきて何故かとても素晴らしい事だと思い少し涙潤いました。これを機にお父さんといい関係をまた築ける事を願います。私も探してみます。

戸籍謄本取ればお父さんわかるんですか?

自分も父親探したいけど…産まれる前に離婚していて父親も自分も顔見た事ない場合ってどうなんでしょうね

 俺も母親が違うので気持ち分かります 俺の場合は産まれてすぐだったので記憶が無いのであれですけど

 フォロー外失礼します 僕もおんなじパターンで一昨年20年ぶりに本当のおとんと飲みにいきました!笑 ドラマみたいなことあるんやなーって思いました笑

 会えて良かったですね! 私も父親と20年くらい会ってなく、フィリピンの書類関係で母と結婚もしておらず、フィリピンで認知が出来ない為、書類で親子関係を証明出来るものが無く探すのに苦労してます この投稿を見て父と会えるんじゃないかと希望を頂けました! ありがとうございます!!!同じです、俺と

おめでとう 私は10年以上前に父親を亡くしてるから絶対に会えんけど、こういうの見たら本当に嬉しいです! お互い事情はあると思うけど会えるのでしたら会ってみたら?

 僕も今年28年ぶりに母と再会しました。五月、七月と続けざまに祖母と父が亡くなり、報告だけしようと、覚えてた母方の祖母の家に行ってみたところ、母に連絡してくれて再会となりました。全部悪いのは我が家だとは思ってました。会えれるならば死ぬ前に会っておくべきです。毒親ならば別ですが。

 感動しました 自分は、実の父親に出会えてません。正直、会いたいのかも分かりませんが・・この手のツイート見ると、色々思う所がありますね

 外から失礼します 感動しました! 自分の妻も父親と20年振りぐらいに再会出来てまして、SNS等ではありませんが近いものを感じました(^^) おめでとうございます

 俺にも記憶にない父親がいる、その父方の祖父母はあったこと何度もあるんだけれど、父親だけはあった事がない。住んでる場所も知らない、聞かされてもない。

26 新しい親子交流Promotion Organizationhttps://www.oyako-koryu.net/

1.2 親子分断のメカニズム

離婚後の親子分断は、複雑に絡み合った構造が存在する。本節では、この親子分断の構造について解説する。

1.2.1 親権と単独親権制度

曖昧で課題がある日本の親権制度。

離婚により、確実に片親を失う単独親権制度。

親権を失った曖昧な別居親の立場(責任・義務・権利)。

親権を規定しているのは民法である。憲法学者の木村草太氏は、「親権には、同居し、世話をしたり、養育したりする「身上監護権」(民法820条)と、子の教育方法、進路決定、職業選択、契約、財産管理などの重要事項を決定する「財産等管理権」(民法820824条)が含まれる。現行民法では、婚姻中は共同親権だが、離婚後は単独親権となっている(民法818条3項本文)」と説明27している。その一方で、作花共同親権訴訟の国側第2準備書面28では

「『親権』の内容は,民法上,監護教育,居所指定,懲戒,職業許可,財産管理と多岐にわたり(民法820条ないし民法824条),実際的には,子の服装,食事,交友関係等日常生活に関する事項や,習い事,進学等教育に関する事項,ワクチン接種,投薬,手術等医療に関する事項等広範囲に及ぶ」ともあり、憲法学者の考えと国の考えが異なっている。更に、民法学者の水野紀子氏は2009年時点において「共同親権に改正すると同時に共同親権者間の合意ができない場合における決定手続を立法した西欧諸国法と異なり,両親の不一致の場合の手当てを欠いている」「民法も親権喪失規定を持っているが,実際には民法の規定は,児童虐待のような行為への制限としては,ほとんど有効に機能しない」と述べている。29このように親権の定義は専門家の中でも違いがみられ、更に親権行使にあたっての課題も存在し、そのような法律を一般国民が深く理解することは難しいのは当然である。離婚に伴い確実に言えるのは、民法819条(離婚又は認知の場合の親権者)により、父母の一方が親権を失うことである。ただでさえ曖昧な親権制度に加え、親権を持たない親の責任・義務・権利は更に曖昧で、実態として子育ての細かな判断は夫婦に丸投げ状態となる。更に、日本は民法第763条において法的手続きを経ずに協議離婚をすることが認められており、協議離婚にあたっては子どもと会うこと(面会交流)を決定しなくても離婚が出来る。このような法制度の中、夫婦関係が悪化した状態で十分な話し合いもすることができず、結果、親子分断が起こることになる。

図1-16 離婚により更に曖昧になる権利

前述の作花共同親権訴訟の国側第2準備書面では、「そして,現行法上,父母の離婚後であっても,父母双方が子と交流し,父母が共同して子に関する決定をすることは何ら禁止されているものではない」と国は主張している。しかしながら、既出のとおり、国の統計において年間14.6万人が親子分断となっており、更に各国からも非難を受けている。このように現状は、国の立場から見ても矛盾している。

  • Abema Times (2019.9.25) 「「共同親権運動をされている方は、一緒に“家裁予算10倍運動”をすれば効果的だ」憲法学者・木村草太教授が問題提起」

https://times.abema.tv/posts/7024507

  • 作花共同親権訴訟(2020.2.28)「被告(国)第2準備書面」

水野紀子(2009.9.1)「家族法改正―婚姻・親子法を中心に」 ジュリスト No.1384 P.58

1.2.2 法的手続き化されていない別居と子の連れ去り

法的手続き化されていない夫婦の別居。

子の連れ去りを追認する家庭裁判所。

親子分断を恐れ、子の連れ去りをする親も単独親権制度の被害者。

離婚に際し、その前段階にあたるのが夫婦の別居である。民法752条では

「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と婚姻中の同居義務が定義されているが、離婚の前段階となる別居の手続きは定義されていない。別居後、家庭裁判所は明文化されてないルール「継続性の原則」により、婚姻中・別居期間において子どもと同居している親に対し、親権を与えるケースが多い。

離婚後、親子分断や低頻度面会交流となる可能性があることを考えると、親権獲得にあたってどんな手法を用いても子どもと同居を継続する、子の連れ去りをするのもある意味当然である。このように、親子分断を恐れ、子の連れ去りをする親も単独親権制度の被害者と言える。

図1-17 子の連れ去り別居を生み出す構造

1.2.3 親子分断のメカニズム

離婚後(婚姻外)の単独親権制度が諸悪の根源。

単独親権制度を根源に層状に積み重なる要因が存在。

図1-18 親子分断のメカニズム

親子分断や低頻度面会交流を生み出しているのは、民法819条の離婚後単独親権制度である。曖昧な別居親・同居親の責任・義務・権利のもと、養育時間の分担を決定する明文化したルールも無い。家庭裁判所では明文化されない「月1回2時間の低頻度面会交流ルール」をもとに、面会交流時間を決定するも、裁判所決定を守らなくても罰則はほぼ無い。結果、親子分断に繋がっていく。遡って親権者決定にあたっては、同様に民法819条の離婚後(婚姻外)単独親権制度をもとに離婚後の親権者を決定することになるが、親権決定のルールは存在しない。家庭裁判所では明文化されない「継続性の原則」をもとに親権決定を行うため、先に子どもを確保したほうが親権獲得に有利になる。更に、本来子の連れ去りは刑法224条の未成年者略取及び誘拐罪にあたるが、警察は最初の連れ去りは容認し、連れ戻しを罪として扱う。保育園・学校・行政機関も、連れ去りをした親のみを事実上保護者として扱い、司法機関・行政機関が子の連れ去りを追認する。そして、このような司法運用の実態を知る弁護士が、依頼者の利益のために子の連れ去りを指南するのも当然である。日弁連

は、子の連れ去りに関する倫理規制を設けておらず、子の連れ去りによって親権獲得が出来ると、弁護士によっては100万円を超える成功報酬を定めているケースや、面会交流を阻止することで30万円もの成功報酬を定めるケースもあり、人身売買とも思える子の連れ去り・親子分断ビジネスが横行することになる。このようにして、子の連れ去りが当たり前のように行なわれることになる。

このように、親子分断は単独親権制度を根本原因として起きている問題である。

1.3 親子分断を抑止する理想的な姿 共同親権

離婚後の親子分断は、複雑に絡み合った構造が存在する。本節では、この親子分断の構造について解説する。

 1.3.1 国際標準は共同親権制度

法務省24カ国調査では、24カ国中22カ国が共同親権を採用。

各国も単独親権制度から共同親権制度に変わってきた。

日本は、共同親権制度に転換しなかったがゆえに、「子どもの権利条約」と「ハーグ条約」の条約違反状態。

日本における子の連れ去りや親子分断が国際的な非難を受けているため、各国のスタンダードを知ることも重要であろう。法務省24カ国調査によれば、調査対象としたG20を含む海外24カ国において、単独親権のみが認められている国はインドとトルコのみであり、その他の多くの国では離婚後も共同・分担して子どもを養育する共同親権を採用している。

離婚に伴い確実に言えるのは、民法819条(離婚又は認知の場合の親権者)により、父母の一方が親権を失うことである。ただでさえ曖昧な親権制度に加え、親権を持たない親の責任・義務・権利は更に曖昧で、実態として子育ての細かな判断は夫婦に丸投げ状態となる。更に、日本は民法第763条において法的手続きを経ずに協議離婚をすることが認められており、協議離婚にあたっては子どもと会うこと(面会交流)を決定しなくても離婚が出来る。このような法制度の中、夫婦関係が悪化した状態で十分な話し合いもすることができず、結果、親子分断が起こることになる。

また、これらの国々も従前は単独親権制度を採用していたが、1979年の映画『クレイマー・クレイマー』や、1990年に発効した「子どもの権利条約」を批准したことにより共同親権制度に切り替えを行っていったと言われる。書籍『子供の福祉と共同親権』30に記載された各国が共同親権制度に転換していった年代をもとにした年表を示す。

図1-20 各国が共同親権制度に転換した年・年代

このように各国は、単独親権制度から共同親権制度に転換を図っていったが、日本は1994年に「子どもの権利条約」を批准するも、問題の根本である民法の改正を行なってこなかった。更に、2013年には「ハーグ条約(国境を越えた子どもの不法な連れ去り・留置に関する条約)」を批准するも、同様に民法の改正を行ってこなかった。この結果、「1.1.5 各国から日本に対する非難」のように、各国から非難を受ける状態となっている。

30 日弁連法務研究財団 離婚後の子どもの親権及び監護に関する比較法的研究会(編)(2007.11 7)

「子どもの福祉と共同親権:別居・離婚に伴う親権・監護法制の比較法研究」日本加除出版

 1.3.2 共同親権制度下の国での別居・離婚後の親子の時間

父母は、別居・離婚後も子どもに対する親権を保持する。
子どもには別居する父母が住む2つの家があり、2つの家を行き来する。
 行き来の頻度についてはDivorce Agreementなどで合意。守らなかった場合は刑事罰がある国も存在。
 親子の時間は、Parenting TimeやCustody Timeなどと言われ、隔週で2つの家を行き来したり、子どもの年齢によるガイドラインがある。

共同親権制度下の国では、別居・離婚後も父母は子どもに対する親権を保持する。そして、子どもは別居する父母2つの家があり、2つの家を行き来することになる。行き来の頻度は、Divorce Agreement(離婚合意書)などにより合意をする。法務省24カ国調査によれば、ニューヨーク州では「面会交流の合意についての違反が著しい場合には,刑事事件として扱われることもある。裁判により支払を命じられた養育費を受領している同居親が,裁判により命じられた面会交流を不当に妨害した場合には,裁判所はその裁量において,面会交流が侵害されている間,養育費の支払を停止するか,支払遅滞による責任を免除することができる」とあり、日本と異なり面会交流不履行の際の罰則が明確であることが分かる。

図1-21 離婚後共同親権の姿

子どもの往来の頻度に関して分かる2つの事例を紹介する。

①ドイツ31

「非同居親との面会交流は原則として2週間ごとに行われている。両親は,いずれが迎えに行くか,あるいは届けに行くかといった細かいことまで決める。面会交流の頻度,宿泊を伴う交流,クリスマスやイースターの過ごし方なども決める。争いがある場合は,メディエーション(調停),裁判で決めることになる。面会は子どもの権利でもあり, 面会するのは親の義務でもある。面会交流の取り決めに違反した場合には,罰金,監置,監護権変更などの制裁がある。乳児の面会交流は,母とともに行うが,宿泊はせず,2週間よりも多い頻度で行うことが望ましいとされている。面会の時に親はいないので,親同士のDVは,それが子どもの面前で行われ,子どもにとってトラウマのようになっているような事例を除いて,面会交流とは関係がない。引き渡しの際にDVの問題が生じうる場合には、監督付面会交流(後述)が利用される」このように2週間毎に子どもが2つの家を往来していることや、イベント時の過ごし方まで取り決めていることが分かる。

②米国

米国のソフトウェア「Custody X Change32」は、親と子どもが過ごすParenting

Time(養育時間)を調整・記録出来るシステムであり、2018年の全米の州ごとの

Parenting Time(Custody Time)を統計情報として公開している。

本統計から全米各州では、父親が子どもと過ごす時間割合が父母全体の2

0%台〜50%であり、日本の裁判所が決定する面会交流時間月1回2時間と比して圧倒的に多いことが分かる。なお、「Custody X Change」では、

「Custody and Visitation Schedules22の事例」、「子どもの年齢別のParenting Plansのガイドライン」なども提供されており、こうった事例やガイドラインの整備、必要に応じてこういったITシステムを日本でも広めていくことが共同親権制度を広めていく後押しになると思われる。

図1-22 全米各州で父親が子どもと過ごす時間割合

図1-23 Custody X Changeで提供しているParenting Timeモデル

  • 日弁連法務研究財団 離婚後の子どもの親権及び監護に関する比較法的研究会(編)(2007.11.7)

「子どもの福祉と共同親権:別居・離婚に伴う親権・監護法制の比較法研究」日本加除出版https://www.custodyxchange.com/

1.3.3 親子分断を防止するために日本で必要なこと

 夫婦関係は契約関係だが、親子関係は契約関係ではなく生来の関係。そもそも別居・離婚により親子の関係を断ち切る事自体が問題。

 夫婦が離婚したとしても、生来の親子関係に合わせ、父母が対等に親子関係(親権)を持つのは当然の姿。

 共同親権を第一に実現し、父母が対等に子育てに関わるようにするための、必要な法整備等を行う必要がある。

2020年の今年、当事者の集まる集会において、日本人のパートナーとの夫婦関係が破綻した外国人当事者から奇妙な質問を受けた。「あなた達はパートナーと結婚したのか?」→ 会場の答え「はい」。更に、「あなた達は子どもと結婚したのか?」→ 会場は困惑し、「そんなことありえるワケないよね」という雰囲気になった。その後、外国人当事者からは「夫婦関係は契約のため終了することが出来るが、契約関係でない親子関係をなぜ断ち切ることができるのか」と至極ごもっともな意見を頂いた。生来の親子関係は契約ではない。場合によっては大人になった子どもが実の親を嫌いになり“法的”に親子の縁を切るというようなこともあるかもしれないが、だからといって子どもが父母から産まれたことには変わりがないのである。こういった本来断ち切れる関係ではない親子関係を本人の意思と無関係に断ち切り、親子分断を誘発して来たのが単独親権制度である。

図1-24 生来の親子の関係は変えられない

このように、生来の親子関係を尊重し、例え別居や離婚によって夫婦の関係が変わったとしても、夫婦両者が対等に子どもとの関係(親権)を持つ共同親権は当然のことと言える。「1.2.3 親子分断のメカニズム」で示したとおり、層状に積み重なった要因により、親子分断は引き起こされているため、解決は一筋縄ではいかないかもしれないが、離婚後の共同親権を第一に実現し、父母が対等に子育てに関わるようにするための、必要な法整備等を行う必要がある。

図1-25 親子分断を防止するために必要な法整備等のイメージ

本章では、子の連れ去りや親子分断の背景となっている単独親権制度についておさらいをするとともに、子の連れ去りや親子分断から視野を広げた更なる問題を紹介する。

2.1 政策矛盾を起こしている単独親権制度

単独親権制度が生み出す問題は、離婚に際しての子の連れ去りや親子分断にとどまらない。単独親権制度は、国が推進する男女が活躍する「一億総活躍社会」「働き方改革」「男性育休推進」といった従来の固定的性別役割分担意識の解消を基とした政策と矛盾している。

2.1.1 単独親権制度の歴史

現行民法は、1898年に制定された明治民法がベース。

明治民法は、婚姻中も離婚後も父親が親権を持つ、単独親権制度。

戦後1947年に民法が改正され、婚姻中のみ父母が共同で親権を保持するよう変更。

離婚時の父母の親権保持割合は高度成長期に逆転し、最新の人口動態統計によれば母(女性)が85%を保持する。

親権に関して近代の歴史を遡ると①明治民法制定以前、②明治民法制定後、③戦後の民法改正後に分けられる。

①明治民法制定以前

広井33 34によれば、明治民法制定以前、明治初期は親権の概念は無く、離婚に際しては男女どちらが「子どもを引き取るか」という概念であった。そして、離婚の際には「江戸時代の慣習法では男子は夫方へ、女子は妻方へ引き取るという制が行われていたが、幕府法では、男女とも夫方で扶養する方針がとられていた」とのことで、明治民法のような父のみが親権を持つようなことは無かったようである。

②明治民法制定後

民法の編纂は明治初年から進められ、明治23年(1890年)に「民法人事編(旧民法)」が制定されたものの法典論争において批判が高まり、施行延期になった。広井によれば「法典論争では、母の親権と離婚後の母と子の扶養義務が論点となっている」とあり、当時も親権に関する議論が問題となっていたことが分かる。その後、明治31年(1898年)に漸く明治民法が制定・施行された。この明治民法では、婚姻中も離婚後も父が親権を持つことが定められ、男尊女卑の不平等な法制度であった。

③戦後の民法改正後

戦後1947年に民法が改正され、婚姻中のみ父母が共同で親権を保持するよう改正された。このことにより、離婚時に親権を父母で決定するようになった。戦後間もない頃は、父が親権を取得することが多かったが、高度成長期の1966年にその割合は逆転し、以降は母が親権を保持するケースが増えていった。この時期は、高度経済成長を背景に「男は仕事、女は家庭」という固定的性別役割分担意識が定着する時期でもあった。その後も母が親権を持つ割合は上昇し、2017年に妻が親権を保持する割合は85%に増えている。35

図2-1 離婚時に父母が親権を保持する割合の推移

  • 広井多鶴子(1994)「<親権>の成立 – 明治民法の中の親・子ども・国家 -」
  • 広井多鶴子(2000)「離婚後の子の帰属 – 明治民法はなぜ親権と監護を分離したか -」
  • 厚生労働省(1999)「離婚に関する統計」親権を行う者別にみた離婚件数構成割合の年次推移 https://www.mhlw.go.jp/www1/toukei/rikon_8/repo5.html

2.1.2単独親権制度により国が性別役割分担を生み出す

単独親権制度(国)が「男は仕事、女は家庭(子育て)」の性別役割分担を生み出し続けている。

性別役割分担を後押しする更なる国の制度。

子育てに関する男性の責任の弱さを生み出す単独親権制度。

婚姻中の制度を踏まえると、日本は婚姻中も事実上単独親権とも言える状態であり、共同親権のラベルを貼っているにすぎない。

「図1-24 生来の親子の関係は変えられない」のとおり、本来親子は生来の関係であり、断ち切ることができない関係であるが、この本来断ち切ることのできない関係を、離婚時に国が定める単独親権制度により断ち切っている。そして、国の機関である裁判所が93%もの割合で母が子育てをするよう親権を与え、離婚した父にはカネ(養育費)だけの義務化が強化されていっている。このように、現在においても「男が仕事、女は家庭(子育て)」という性別役割分担を国が生み出し続けている。更に、婚姻中も性別役割分担を後押しする制度が用意されている。婚姻中の共同親権も「両者の不一致の場合の手当を欠いている」と言われ 36、 婚姻を継続するという視点から見てももろい制度である。また、未婚の母の子どもは基本母が親権を持ち、婚姻をしなければ父は通常親権を持つことは無く、単独親権制度により子育てに関して男性の責任や義務の弱さを生み出している。

私見ではあるが、婚姻中の制度も踏まえると、日本は婚姻中も事実上単独親権状態であり、共同親権のラベルを貼っているにすぎないように見える。このような性別役割分担を生み出す単独親権制度のもと「男性育休の義務化」などの男性の子育て参画施策が推進されているが、男性が愛情をもって子育てをするものの離婚時には親子分断となり、絶望させられるチグハグな状態を現状の法制度が生みだしている。

図2-2 単独親権制度が性別役割分担を生み出す

36 水野紀子(2009.9.1)「家族法改正―婚姻・親子法を中心に」 ジュリスト No.1384 P.58

2.2 単独親権制度が生み出している更なる問題

本節では単独親権制度が生み出している更なる問題を取り上げる。

2.2.1 コロナ禍で浮き彫りになった単独親権制度による問題

 コロナ禍で、単独親権制度により社会的弱者となった方々に噴出した問題。

 シングルマザーの困窮・こどもの貧困、コロナ休校によるひとり親家庭の混乱。

コロナウイルスを理由に同居親から面会交流を拒否される。

コロナウイルスにより家庭裁判所審理が中止・延伸され、面会交流がされない。

 コロナ禍で、単独親権制度により社会的弱者となった方々に噴出した問題。  シングルマザーの困窮・こどもの貧困、コロナ休校によるひとり親家庭の混乱。 コロナウイルスを理由に同居親から面会交流を拒否される。 コロナウイルスにより家庭裁判所審理が中止・延伸され、面会交流がされない。

コロナ禍で、同居親・別居親双方で問題が噴出した。同居親は「シングルマザーの困窮・子どもの貧困」、「コロナ休校によるひとり親家庭の混乱」といった問題。別居親は「コロナウイルスを理由に同居親から面会交流を拒絶される」、「コロナウイルスにより家庭裁判所審理が中止・延伸され、面会交流がされない」といった問題。これらは、双方とも単独親権制度により社会的弱者となった方々に対して起こった問題である。

図2-3 コロナにより同居親(ひとり親家庭)で起こった問題

図2-4 コロナにより別居親で起こった問題

2.2.2 離婚後のシングルマザー・子どもの貧困、養育費の不払い

母子世帯の貧困率は51.4% 、子どもの貧困率は14.0% 。
単独親権制度による低頻度面会交流・親子分断により、母が働く機会・時間を奪い、母の収入を押し下げる。
 低迷する養育費の受け取り率。母子家庭:24.3%、父子家庭: 3.2%。

単独親権制度により、離婚後の子どもの養育は主に母となる。「2.1.2単独親権制度により国が性別役割分担を生み出す」のとおり、婚姻中も「男性は仕

事、女性は家庭」の性別役割分担が強い中、別居・離婚による低頻度面会交流・親子分断により、更に女性は家事・子育てに多忙になる。家事・子育てに時間がとられ、制約が多いため正社員での雇用は難しく、仕事はパートタイムなど非正規の仕事の割合が高くなる。また、正社員として働いても、日本の男女賃金格差は先進国の中でも高く、収入確保が難しい。結果、シングルマザーの貧困や子どもの貧困に繋がっていく。

また、別居した父の中にも子の連れ去りや親子分断により心理不安を抱える者もおり、仕事を始め日々の生活に影響を与える。このようなことから、別居親も精神的にも経済的にも追い詰められるケースがある。場合によっては親子分断を苦に、自死を選んでしまう別居親もいる。

また、養育費に関しても、別居・離婚後の親としての権利も曖昧な中、子どもに会えず養育費だけを支払わなければいけない動機づけが弱く、更に収入が減少した場合は、養育費不払い問題に繋がっていく。つまり、単独親権制度がシン

グルマザー、別居父双方に精神的にも経済的にも困難な状態を作り出している。

このように、シングルマザーや子どもの貧困をはじめとした問題を軽減していくためにも、月1回2時間の低頻度面会交流や親子分断を解消し、父母ともに養育時間を分担することは有効だと私たちは考えている。

図2-5 母子家庭の貧困問題・養育費不払い問題を起こす構造

図2-6 就業上の地位(雇用形態)別平均就労収入

2.2.3 養育費の目的外流用ビジネス

養育費不払い問題を発端にした、養育費の回収代行ビジネス。
養育費は子どものために使われるお金だが、一部の回収代行業者は15%〜50%もの手数料をとる。
 子どものために使われる養育費が目的外に流用されることは、倫理的な問題でもある。

2020年になり活発に養育費不払い問題が取り上げられるようになってきた。

国においても、2020年1月〜5月にかけて森まさこ前法務大臣の立ち上げた私的勉強会が行なわれ、2020年9月現在、「不払い養育費の確保のための支援に関するタスクフォース(2020年6月~)」と「養育費不払い解消に向けた検討会議(2020年6月~)」が開催されている。私たちとしても、子どもの養育に必要な費用を父母が分担し支出することは当然のことと考えているが、この養育費不払い問題に対処するため、弁護士や事業者による養育費の回収代行ビジネスが立ち上がっていることを危惧している。養育費の回収代行ビジネスの中には、弁護士報酬や保証料の名目で15%〜50%もの手数料をとる業者がおり、これらの業者からすれば、養育費は長期的な安定収入が狙えるビジネスとなる。そもそも養育費は誰のために使われるものかと言えば「子どものため」である。

「子どものため」に使われる養育費が、営利を目的する代行業者の利益につながるとすれば倫理的に大いに問題がある。以下に回収代行業者が2020年8月現在ホームページで公開している情報の一例を掲示する。

図2-7 養育費の回収代行ビジネスの一例

2.2.4 増加する未婚の母・年間16万件にのぼる人工妊娠中絶

未婚の女性が妊娠した場合、基本的には「婚姻」するか「未婚の母」として子どもを産むか、「人工妊娠中絶」をするかの3つの選択肢。

未婚のシングルマザーは、年々増加し15万人を超える。

出生数の1/6にあたり、年間16万件にものぼる人工妊娠中絶。 問われる生命教育と親の責任。

未婚の女性が妊娠をした場合、基本的には「婚姻」して子を育てるか、「未婚の母」として子を育てるか、やむなく「人工妊娠中絶」をする何れかであろう。

図2-8 未婚の女性が子どもを妊娠したケース

このうち、「未婚の母」の子どもの親権は基本的に女性が持つ。「未婚の母」は年々増加しており、15万人を超える。37「未婚の母」はシングルマザーとなるため、「2.2.2 離婚後のシングルマザー・子どもの貧困、養育費の不払い」のとおり、シングルマザーの貧困につながる。

図2-9「未婚の母」の数の推移

また、少し話がそれるが、人工妊娠中絶件数は少子化問題が言われ続けているにも関わらず2018年時点で出生数の1/6にものぼる。人工妊娠中絶は女性の権利ともされてきた。ただその理由を見ると、単独親権制度による性別役割分担により、女性にだけ子育ての責任を負わせているからではないかと思える内容も並ぶ。例えば「将来のキャリアにおいて障害となる可能性がある」、「経済的困難」、「(仕事や育児で)新たにに子どもにかけられる時間がない」といったような社会の働きかけが可能な要因は解消し、男女とも子育てをすることで中絶が減少し、出生数が増加する。

図2-10 出生数と人工妊娠中絶数の概観

37 総務省統計研究研修所 (2017)「シングル・マザーの最近の状況(2015 年)」

 2.2.5 事実婚のカップルの子育て

婚姻を避ける事実婚カップルの子育て。

子どもの親権は基本的に母が持ち、父は親権を持つことができない。

結婚に対する意識が変わってきている。2013年の厚生労働白書38によれば、「我が国では、かつては皆婚規範が強く、特別な理由がない限り人生の中で結婚することが当たり前とする意識が一般的だった。しかし、近年では高い年齢に至るまで未婚に留まる人々が増え、結婚を選択的行為として捉える見方が広まっていると考えられる」とある。またその割合は、若い世代ほど高く、今後も「結婚は選択肢の一つ」という考え方は増えることが予想される。

結婚を避ける事実婚カップルが、子どもを共同で育てることもある。しかしながら、単独親権制度の日本では、子どもの親権は基本的に母が持ち、父は親権を持つことができず、父の法的な責任や権利は曖昧な状態となる。各国と比較して少ない割合ながらも婚外子が増えており、今後課題になっていくのではないだろうか。

図2-11 増加する「結婚は選択肢」という考え

38 厚生労働省(2013)「厚生労働白書」第2章 多様化するライフコース 第2節 結婚に関する意識 P.56

本章では更に広い視点に立ち、単独親権制度が生み出してきた「家族」と

「社会」との関係について考察し、私たちが考える共同親権制度による心地よい 「家族」と「社会」との関係が生み出す期待効果を示す。

3.1 「社会」中心で、単独親権制度により翻弄させられる現代の「家庭」

現代の子育て世代は疲弊している。ちょうど40年前1980年は3組に1組が共働き世帯であったが、割合は逆転し、2019年は3組に2組が共働き世帯と

なっている。39このように現代は、女性も男性も働き、子育ても家事もする。また1

986年に施行された男女雇用機会均等法から続く、女性活躍推進や働き方改革の流れの中で、女性の就業率も上がってきた。

図3-1 専業主婦世帯と共働き世帯の推移

図3-2 高まる女性の就業率

このように、女性の社会進出を推進する「社会」的な政策を進め、男性が家庭もコミットメントするようにしようという政策がある一方で、女性を「家庭」に男性を「仕事」に留めさせる基盤制度が、単独親権制度である。見てきたように離婚後の親権は、実質上母親が子どもを引き取ることを前提とした制度である。また、女性が働くことを抑制する制度・環境も存在する。「第3号被保険者」、「配偶者控除」、「配偶者特別控除」といった制度、子育て・介護など制約のある女性の正社員としての雇用が困難であることから先進国の中で最悪と言われる男女賃金格差などである。これらのレガシー的制度は国が進める「一億総活躍社会」「男女共同参画」「働き方改革」といった政策に反している。

1989年の三共製薬リゲインCM「24時間戦えますか(中略)はるか世界で戦えますか ビジネスマン ビジネスマン ジャパニーズビジネスマン」40 のような時代を支えていたのが、単独親権制度による性別役割分担である。時代は移り2020年のNEWクレラップWEBムービー「僕は手伝わない」41 では、女性も働き、男性も家事・子育てを当たり前のようにする姿が描き出されている。しかしながら現実の「家庭」は、単独親権制度により国(裁判所)が未だ女性が子育てをするものと実質的に強制している。

図3-3 1980年代と現代の「社会」と「家庭」の関係イメージ

このように、現代は国の政策に一貫性がないことから「家庭」は翻弄させられている。中でも働く女性は特に疲弊をしている。次にとある40代の共働き夫婦の子育ての状況を例示する。夫が「24時間戦えますか」の役割を引きずる中、働く妻が子育てと仕事の間を奔走していることがよく分かる事例である。

図3-4 とある夫婦の数年前の子育ての状況(妻からのヒアリング)

  • 独立行政法人労働政策研究・研修機構「早わかり グラフでみる長期労働統 – Ⅱ労働力、就業、雇用図 – 12 専業主婦世帯と共働き世帯」

https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0212.html

3.2 「家庭」と「社会」の関係を再構築

これからの時代において、ジェンダーギャップを軽減し男性女性に関わらず一人の人間が活躍する時代を作り上げていくことを前提とするならば、家庭での性別役割分担を生みだす「単独親権制度」を廃止し、共同親権制度に転換するのは当然の流れといえる。以下に、私たちが考える「家庭」の姿と、「家庭」と「社会」の関係を示す。

3.2.1共同親権により作り上げられる「家庭」の姿

「夫婦関係(パートナー関係)」と「親子関係」を分離し、多様な「家庭」の姿を認める。

「親子関係」と「親権」は基本的に一致し、「親権」は親に問題が無い限り途切れることはない。

「夫婦関係」によらず父母ともが「子ども」を支え合う。

従来の「家庭」は、居住場所である「世帯」に従属していた。更に「婚姻関係」に「親権」が従属しているため、「婚姻」が終了すると法的に片親しか支えることのできない状況となる。結果、「親子分断」や「ひとり親の貧困」の悲劇を生みだした。

単独親権制度を廃止し、共同親権により作り上げられる「家庭」は、もっと多様になる。家族を構成するメンバーがそれぞれ「婚姻などの夫婦関係(パートナーシップ関係)」と「親子関係」を持つ。生来の「親子関係」と「親権」は一致するため、「夫婦関係」状態によって分断されることも無い。子どもはずっと「ふたり親」であり、親が別々に暮らしているのであれば2つの「世帯」に属し、父母が分担・協力して子どもを支え続ける事ができる。

図3-5 共同親権制度により作り上げられる「家庭」

3.2.2共同親権により作り上げられる「家庭」と「社会」の関係

「子ども」を一人の人間と認め、「社会」も「家庭」も“ほどよく”、みんなで子育てができる。

 男女ともが経済的にも精神的にも自立し、得意や個性を活かしながら分担・協力してチームを作り「家庭」を作り上げる。

 男女ともが「家庭」にも「社会」にも関わることになるため、子育てのように負荷がかかるタイミングでは「家庭」も「社会」 “ほどよさ”が大事になる。

「社会」の別の側面として、特に子育て中の「家庭」の“ほどよさ”を作り上げられるようサポートする。

共同親権のもとで最も大切なことは「子ども」も一人の人間としてとらえ「社会」も「家庭」もほどよく、みんなで子育てができることである。

まず、共同親権により「家庭」において男女ともが子育てをすることは当たり前で、得意や個性を活かしながら分担・協力してチームを作り「家庭」を作り上げることになる。そして、離婚など夫婦関係が悪化し別居となることや、100歳人生時代になることを考えると、一人一人が稼ぎ続けるチカラを持つことは大事で、男女ともが「社会」に関わり、経済的にも精神的にも自立する必要がある。

このように、男女ともが「家庭」も「社会」も関わることになるため、特に出産したてなど子育ての負荷がかかるタイミングでは「家庭」も「社会」も特に“ほどよさ”が大事になる。「社会」は別の側面も強く持つようになる。「家庭」が“ほどよさ”を作り上げられるよう、「職場」、「地域コミュニティ」、「行政・司法」などが、積極的に「家庭」を支援する役割を持つ。支援は、制度、物理的、経済的にとどまらず、社会全体の“寛容さ”も必要になる。

図3-6 共同親権による「社会」と「家庭」の関係


概念的な話も含まれるため、“ほどよさ”や“寛容さ”に関して、共同親権と親和性のありそうなことを例示する。

●働くことについて

従来の正社員の勤務は「週5、8時間勤務」場合によっては「月40時間までの残業込」というような固定賃金体系で、雇用保険制度では在宅勤務を認めるために特別な手続きが必要で、「職場に通勤をして少なくとも8時間働くことが前提」となる仕組みであった。結果、朝は7時に子どもを保育園に送り、9時に会社に着き、17時、場合によっては残業で18時になり、19〜20時に保育園に迎えに行き、夕飯を作り、子どもの宿題と音読に付き合い、22時に絵本を読みながら寝かしつける。更に、終わらなかった仕事を寝かしつけ後に行う。このような状態であれば家庭が疲弊するのは当然である。

働き方については、共同親権先進国の事例を参考にしてはどうだろうか。子育て中のパパママは週のうち60%勤務、80%勤務というフレキシブルな制度がある国もある。日本でも時短勤務を既にしている人の多くは、限られた時間の中で働くため、フルタイム勤務の方より生産性が高いという話も聞く。

また、今回のコロナウイルスがある意味いい機会にもなっている。一部ではあるかもしれないが在宅ワークが基本となり、週何回かどうしても必要な時間だけ会社に行く。在宅ワークが基本であるため無駄な通勤時間が無くなり、家庭で子育てをする時間的な余裕も生まれる。なお、子育て中の在宅ワークの経験者からは「週2〜3日出勤、4〜5時間勤務」が、精神的にも体力的にも丁度いいという声が聞こえてくる。このような状態に父母ともがなることができれば、家庭で男女ともに分担・協力することがしやすいであろう。

また、安定的に収入を得るために、1社からしか収入を得ることができないことは、個人視点からすれば大きなリスクを伴う。自らダブルワーク、トリプルワークで収入源を作り上げることで収入源を増やすことは個人の視点に立った時に安定をもたらす。更に、例えば1つの収入源は時給1万円を生みだすチカラを持てれば、時間にゆとりのある生活を作り出すことが出来る。これは、金融投資を分散して安定させる考え方と全く同じであり、「正社員+プロボノ」、「農業+デザイン仕事」、「NPO職員+コーチング」のように既に実践している事例もある。

万一、離婚によって別世帯を持たなくてはいけなくなったときにも、一人一人が稼がなければいけない。シングルマザー支援協会の江成道子氏は、シングルマザーの自立の方法として「主婦脳から世帯主脳へ42」を挙げている。貧困防止のためにも男女とも稼ぐチカラを持つことは重要である。

●子育て・子どもの立ち位置について

子育て自体にも“ほどよさ”が必要になる。日本には「しつけ」という言葉が存在し、民法820条では親の懲戒権を未だ認めている。懲戒の方法として、最も詳細な民法注釈書である新版注釈民法(25)43 では「懲戒のためには、しかる・なぐる・ひねる・しばる・押入れに入れる・蔵に入れる・禁食せしめるなど適宣の手段を用いてよいであろう」と未だ例示されている。そして近年、親による子どもの虐待死のニュースでは「しつけ」名目で虐待を行ったことが報道されることがある。懲戒権の削除に関しては、既に国会でも議論されているが、未だ条文は残ったままである。

幸せを科学的に研究するポジティブ心理学の領域の研究において、西村・八木によれば、「支援型」、「厳格型」、「迎合型」、「放任型」、「虐待型」、「平均型」と6つに分けた子育てタイプのうち、「支援型」が子どもの平均所得、幸福感、学歴が最も高くなり、倫理観も醸成される結果44が分かっている。更に、西村・八木は「幸福感」を決定する因子として、「健康」、「人間関係」に次ぐ要因として「所得」、「学歴」よりも「自己決定」が強い影響を与えているという結果45も発表している。

このように、私たち大人が子どもの幸せを望むのであれば、子どもに寄り添い支援し、子どもの自己決定を促す事のできる子育て方法に変容する必要がある。

●居住と教育について

コロナウイルスによるリモートワークの拡大により、仕事理由からの居住場所制約が無くなる方も出てきている。先進的な子育て家庭の中には、子育てにやさしい環境を求め、既に都市圏から地方に移住をされている方もいる。また2拠点居住や固定的な居住拠点を持たないシェアリング居住をされる方もいる。このような方々がネックとなるのが、保育園や学校といった、託児機関や教育機関である。

拠点それぞれで、随時託児をサポートする施設があれば移動も容易になる。教育も安価で良質な教育を受ける選択肢が増えれば、親の収入による教育格差も軽減される。なお、教育のリモート化について言えば、通信制高校のN高46 は全国で学ぶことができ、生徒数は1万4,852人以上である。無料で学ぶことのできるYouTubeコンテンツとして「小島よしおのおっぱっぴー小学校47」は分かりやすいと好評である。更に、Googleが大卒同等と認定する教育プログラムを開始したことも報道された。このように、日本にとどまらず世界中で良質な教育を受ける機会が作られ始めており、公教育のあり方も変わることが求められるだろう。

このように「仕事」による居住の制約と、「託児や教育」による居住の制約の2つが軽減されれば、子育ても一人一人の生き方ももっと柔軟になれるだろう。万一、父母が別居状態になり、離れたところに住んだとしても途切れなく教育を受けることができるようになれば、子どもが別居する家庭を往来することも容易になる。

  • 江成道子(2020.2.20)「コラム:主婦脳から世帯主脳へ シングルマザーのあなたに合った自立の方法とは?」一般社団法人 日本シングルマザー支援協会
  • 於保不二雄(編)、中川淳(編)(2004.12)「新版注釈民法(25)親族(5) 親権・後見・保佐及び補助・扶養 — 818条~881条 改訂版【復刊版】」有斐閣コンメンタール
  • 西村和雄・八木匡 (2016) 「子育てのあり方と倫理観、幸福感、所得形成-日本における実証研究

-」

 3.2.3共同親権制度の国家的効果

 共同親権制度の国の方が、ジェンダーギャップ(男女格差)が少ない。

ジェンダーギャップが少ない国の方が、出生率が高まる。 ジェンダーギャップが少ない国の方が、1人あたりGDPは高まる。

ここでは、共同親権制度の効果を示すため、共同親権制度により軽減されるジェンダーギャップを元にした統計を紹介する。

☆共同親権制度の国の方が、ジェンダーギャップが少ない

法務省24カ国調査にて判明した各国の親権制度と、ジェンダーギャップ指数をグラフ化した。この結果から見ても、共同親権制度の国の方が、ジェンダー

ギャップが少ないことが分かる。なお本調査でジェンダーギャップが最も大きいサウジアラビアはイスラム教国であり、イスラム法では「子どもは父親のもの」とされているものの、本調査では共同親権を認めると報告されている。

図3-7 法務省24カ国調査各国のジェンダーギャップ指数(2020)

☆ジェンダーギャップが少ない国の方が、出生率が高まる

内閣府「選択する未来2.0 中間報告」48によれば、「ジェンダーギャップ指数が高い(男女格差が少ない)ほど、出生率は高まる傾向」とある。以下のとおり、掲示されている8カ国の中で、日本を除きすべて共同親権制度の国である。201

9年の出生数は86.4万人と将来推計よりも2年も早く少子化となった。49 50 第2次ベビーブーム世代による出産のピークも見受けられず、今後急速な出生数低下も予想される。出生数回復のためにもジェンダーギャップ解消は急務ではないだろうか。

図3-8 ジェンダーギャップ指数と出生率の関係

図3-9 出生数・将来推計

☆ジェンダーギャップが少ない国の方が、1人当たりGDPは高まる

また、「ジェンダーギャップの縮小に成功した国と、強力な経済競争力を持つ国との間には、強い相関関係がある。ジェンダーギャップ指数の高い国ほど、一人当たりGDPや国際競争力が高い51」と言われているため、法務省24カ国調査で対象となった国について、一人あたり名目GDP(2018)とジェンダーギャップ指数

(2020)をグラフ化した。どの国と比較するかという点については議論があるかと思うが、赤枠の国家群と日本の立ち位置が異なり、一人当たり名目GDPが低いことが分かる。単純に考えれば分かることであるが、男女のうち一人しか働かない場合よりも、男女二人が働く場合のほうが全体で見れば生産性が高くなるのは当然である。

図3-10 法務省24カ国調査各国の一人あたり名目GDP(2018) vs. ジェンダーギャップ指数(2020)

  • 内閣府(2020)「選択する未来2.0 中間報告」参考資料集 3-7.ジェンダー・ギャップ指数(GGI)と出生率
  • 厚生労働省「人口動態統計」
  • 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(2017年推計)」
  • 内閣府 男女共同参画局(2012.12.13)「女性の活躍状況の資本市場における「見える化」に関する検討会 報告」参考資料2

http://www.gender.go.jp/kaigi/kento/mieruka/

4.1 「制度」と「性別役割分担」の因果関係

私たちは、第一に「単独親権制度」を廃止し、「共同親権制度」に転換することを提言する。一部の意見として、他国と異なる歴史をもっており性別役割分担が根強く残るため共同親権制度に対し“慎重な検討”をと述べる方もいるが、これは原因と結果が逆転している。広井によれば「江戸時代の慣習法では男子は夫方へ、女子は妻方へ引き取るという制(度)が行われていた」 とあり、江戸から明治前期は離婚後に性別によって子どもの養育を分けていた。

明治民法では近代日本の発展を果たすために、父が親権を持った。戦後、日本の復興を果たした高度成長期は人口ボーナス期でもあり、産業革命による職場と家庭の分離を第3号被保険者や配偶者控除といった専業主婦優遇の法律が後押しし、「男は仕事、女は家庭」の性別役割分担意識が醸成された。このように「時代」を支える「制度」が「性別役割分担」を生みだしたのであり、「性別役割分担」が「制度」を生みだしているのではない。

しかし、もう状況は変わった。日本は人口オーナス期(人口減少期)に突入し、100歳まで生きることが当たり前の時代になった。このような流れから「一億総活躍社会」が政策として掲げられ、男性も女性も働くし、子育ても家事もするのが当然の時代に変わったのである。このような時代を支えるためにも、日本の家族法のOS(基盤)とも言える民法を変えることは急務である。

各国も「単独親権制度」から「共同親権制度」に転換し、性別役割分担を軽減してきた。

図4-1 「時代」を支える「制度」が「性別役割分担」を作り出した

4.2 基本政策提言内容

私たちは男女平等の子育てを実現するために、次の提言をする。

上記大提言の実施に合わせ、以下基本政策を進めることを提言する。

①親の権利と養育責任の明確化 子どもが両親から愛される権利の保障

②婚姻関係と親子関係を切り離し男女平等の子育てをする法改正・ ルール整備

③男女平等の子育てを実現する司法・行政の体制・運用整備

④行政機関における、親権状態による差別禁止の法整備

⑤ライフステージごとの生命、親の権利・責任、子どもの権利教育の義務化

⑥スキーム監視・施策提言・実行権限を持つ、省庁横断組織の設立

以下に、提言内容の解説をする。

大提言:2021年までに民法の単独親権制度を廃止

現状は単独親権制度により、二人の親の間で法的な不平等が存在する。この法的な不平等により、家族関係問題を解決する家庭裁判所が判断を行うため、単独親権制度が維持されたままで二人の親の間の不平等は無くなることはない。男女平等の子育てに変革するためには、民法の単独親権制度の廃止を第一にする必要がある。

共同養育を定める1994年の子どもの権利条約を批准してから26年も法改正がされて来ず、直近10年間も共同養育や共同親権の話題は浮かんでは消えていった。

日本は1日400人の子どもたちが自身の意図に反して親子分断をさせられている。私たち親子分断の当事者としては一刻も早く、遅くとも2021年までに民法の単独親権制度を廃止することを求める。

この大提言の実施を前提としたうえで、以下基本政策を進める必要がある。

①親の権利と養育責任の明確化 子どもが両親から愛される権利の保障

日本における親としての権利や責任は親権として定められているが、民法の定義は曖昧で、専門家の間でも考え方にズレがある。また民法では子どもの視点に立ち、両親と関わること・愛されることを定めるような規定は無く、民法上子どもの権利は無いに等しく、子どもは親の所有物として取り扱われている。

親子が親子として関係を維持し続けるためにも、親の権利(養育権)を基本的

人権として明確に規定し、“親”そして“子ども”両者の視点に立った法整備をする必要がある。

②婚姻関係と親子関係を切り離し男女平等の子育てをする法改正・ ルール整備

現状の親子関係は“親権”として定義されるため、婚姻関係が無ければ親権を共同で持つことが出来ない。つまり、親子関係は婚姻関係に従属した存在となっている。元来親子関係は、生来の関係であり契約関係である婚姻関係とは異なる。 共同親権社会に転換するためにも婚姻関係と親子関係をまず切り離し、その上に男女平等な子育てをする法改正・ルール整備をする必要がある。

③男女平等の子育てを実現する司法・行政の体制・運用整備

民法の単独親権制度のもと、現場の家庭裁判所・行政機関・学校が一体となり、男女不平等な子育ての状態を作り出している。②の男女平等の子育てをする法改正・ルール整備をした上で、司法・行政の体制・運用整備をする必要がある。

④行政機関における、親権状態による差別禁止の法整備

既出のとおり親子関係は生来の関係であるが、単独親権制度により既に沢山の片親が親権を失ってしまい、あるいは親権があったとしても別居を理由に、行政機関・学校において親として扱われていない問題が生じている。このため、万一親権が無かったとしても、別居状態にあったとしても、不当に親としての地位を損なわれないよう法整備をする必要がある。

⑤ライフステージごとの生命教育、親責任、子どもの権利教育の義務化

現状、例えば“親権”についてどのような責任・権利・義務を持っているのか答えられる国民はどれくらいいるだろうか。婚姻や出産時点でも親権を学ぶ事はなかった。

親としての責任や権利を浸透させるためにも、中高生程度からライフステージごとに親としての責任・権利の教育が必要である。また、無いに等しかった子どもの権利の教育も必要である。

⑥スキーム監視・施策提言・実行権限を持つ、省庁横断組織の設立

民法の単独親権制度の廃止は、共同親権社会の転換の入り口に立った状態であり、転換後も必要な調整や手当をする必要がある。更に、国家行政の視点に立つと、本法整備は、民法および裁判所を管轄する法務省の他、内閣府、文部科学省、厚生労働省、警察庁など多省庁に関わってくる。

このため、スキーム監視・施策提言・実行権限を持つ省庁横断組織「こども家族省(仮称)」を設立し、共同養育を推進する責任を持たせる。

4.3 よくある質問と私たちの考え

<共同親権化の順序について>

Q スグに共同親権制度に転換するシステムは出来上がらず現実的ではないのではないか。

A 全てのシステムをスグに完璧にできるようにすることは無理だろう。各国も時間をかけて「単独親権制度」から「共同親権制度」の社会に転換し、また未だ途上にあるとも言われている。「共同親権制度」への転換は「性別役割分担」を軽減する意志表現ともいえる。このため、「共同親権制度」にまず転換し、出来ることから積み上げていく必要がある。

Q 単独親権制度を維持しながら、共同養育を進められるようにするという案も考えられるのではないか。

A 現状は単独親権制度により、二人の親の間で法的な不平等が存在する。この法的な不平等により家庭裁判所が判断を行うため、単独親権制度が維持されたままでは二人の親の間の不平等は無くなることはない。手続き法の整備などよりも先に、民法の単独親権制度を廃止する必要がある。

<共同親権の姿について>

Q 共同親権になったあとの具体的な姿がまだ良くわからない。

A 共同親権各国、例えばアメリカ、カナダ、ドイツなどの国に住む方々に聞くと、隔週や毎週子どもが二人の親の間を行き来することが当たり前である。そして、子どもが元パートナーの家に行っているときは、新しい彼・彼女と過ごしたり、溜まった仕事を集中してこなすなど、充実した時間を過ごしている。

離婚がタブーなことで、かつ貧困問題と繋がっている日本はどこか暗い印象を受けるが、共同親権各国の方々は離婚後楽しそうに過ごしている印象を受ける。

あなたは、どちらの社会を望みますか。

Q 共同での子育てが困難な親や、「問題のある親」には親権を与えず、合意ができる夫婦のみに共同親権を認める選択的共同親権がいいのでは?

A 選択的とすると、現在の一方の親の同意のない子どもの連れ去り問題は解決しない。更に、子どもを連れ去ったDVや児童虐待の加害者に「選択」をさせる弊害を抑止できない。

原則共同親権とし、父母ともに親権があることで、連れ去りの問題も軽減する。万が一、父母が子どもに危害を加えたりする場合、現在の民法にある親権喪失や親権停止の制度が機能するようにすることも必要だ。更に、合意が困難になっているカップルを支援し、子どものためにもフェアな合意を取り決めさせる仕組みも必要である。

Q 共同親権で親の意見が一致しない場合は、どうなるのか。

A まず、協力しての子育てが困難な場合は、交代で子どもを養育することになるが、その場合、父親の家にいるときは父親の意見を優先させ、母親の家にいるときは母親の意見を優先させる。また、意見を優先させる側を1年ごとに交代する方法がとられることもある。

また、意見の不一致が起きやすい状況でよくあるのは、たとえば、課外活動

(塾、スポーツクラブ、習い事など)にかかるお金を誰が負担するかなどである。最初に「課外活動にかかる費用は、父親が60%を負担し、母親が40%を負担する」などと決めておく。最初に行き届いた養育計画を作成しておくことで、後の争いを避けることができる。父親の家と母親の家で教育方針が異なっていても、実際には子どもはその状態によく順応することが知られている。

Q 共同親権になると、夫婦間の合意形成が困難な場合に不都合が生じるのでは? たとえば、「進学に同意してほしければ言うことを聞け」など、同意権を濫用するのでは?

A 欧米ではあまり問題にはなっていない。 例えば、アメリカでは離婚に際して、財産分与、養育費、親権、面会交流などについての養育計画を裁判所に提出し、裁判所の承認を受けることが必要である。行政や裁判所が養育時間の配分についてひな形を複数用意し、半々の養育時間の配分や、100日~120日の面会交流など複数のプランが選べるように促され、指針となるとともに不合理な取り決めは抑止される。

アメリカ弁護士会によれば、「離婚については、おそらく95%以上のケースで、

対立的な訴訟ではなく、当事者だけの話し合いか、調停委員による調停

か、弁護士の助けを受けるかで、合意が成立している」(The American Bar

Association Guide to Family Law, The American Bar Association

;1996)。裁判所が決めるのは全体のケースの2~10%に過ぎない(Lamb

Michael E;2010,The role of the Father in Child development)。

共同親権が定着していても、不合理な取り決めや支援の不在がもめごとを起きやすいのは日本と同じである。

Q 共同親権では再婚家庭に混乱と複雑化を招くのではないか。

A 共同親権の国では、元パートナーの再婚家庭も含め、新たな家族関係を既に築いている。子どもが、元パートナーの再婚家庭で過ごすことも当然行われていおり、本指摘は杞憂に過ぎない。フランスでは、週末毎に元パートナーのもとにいる複数の子どもの送迎を車でする父親の様子が、テレビCMになっている(2011年、ルノー)。親たちの感情の問題はあるだろうが、自分にあった家族のあり方を選べるのは、親子関係を保証する共同親権があるからであり、子どもにとっては「おうちが二つ」になる。日本のように再婚家庭で育児経験のない新たなパートナーがいきなり親の役割を負わされるより、子どもから見て「おうちが二つ」を周囲が認めることが一番シンプルではないだろうか。

<養育費用の分担(養育費)について>

Q 共同親権では養育費の取り決めはどうなるのか。

A 父母の養育時間の配分と反比例して養育費の額が変動するのが一般的だ。たとえばアメリカのウィスコンシン州では、父親(母親)の養育時間が24%までは養育費の額は変わらない。しかし父親(母親)の養育時間が25%以上になると養育費は減額され、父母の養育時間が半々であれば養育費は0になる。

実際には、国ごとに様々な方法や変動の基準が定められ、父母の合意があって、裁判所が容認すれば、どのような養育費にすることも可能である。

Q 単独親権から共同親権になると、現状の別居親(主に父親)の養育費負担は減るのか。

A 共同養育に転換すると、現状の別居親の経済負担は増える。現状別居親が子どもと過ごすのは、限られた“面会交流”だけである。共同親権になることで別居親ではなくなり、子どもが生活する衣食住をまかなう費用が増えるためである。

<養育時間の分担(面会交流)について>

Q 共同親権制度を作ったとしても会うのは面会交流。相手が合意しなければ共同親権にはならない。「子どもに会いたい」から共同親権を主張するのは本末転倒では。

A 「相手の合意がなければ共同親権にならない」のではなく、「共同親権だから対等な立場での合意が促される」。裁判所では育児への実際のかかわりが評価されるので、父母双方の育児が促される。

そもそも親子が会えない現状を変えることを望むのはおかしなことだろうか。

Q 面会時に元配偶者や子どもに危害が加えられる恐れがあり、実際に殺人事件も起きている。

A 面会交流中の殺人事件の背景に、子どもと会えなくなったことで人生に希望を持てず絶望し、また、将来的にもこのまま会えなくなるかもしれないという恐怖心が働いている可能性もある。逆に、単独親権が事件を引き起こす事件は少なくない。また、同居親や継親による殺人事件も起きており、別居親が起こした事件だけを取り上げる見解は偏っている。

Q 子どもが別居親と会うのを嫌がっているにも関わらず、面会交流をさせることに問題があるのではないか。

A 引き離された子どもが別居親に敵意を向けたり、「会いたくない」と言い出すことは「片親疎外」として海外では知られている(WHOで国際疾病分類(IC

D-11)に登録された健康障害)。親子の引き離し行為は児童虐待なので、こういった状況を生み出した同居親側の責任も問われる。親が婚姻関係にあれば、例えば思春期の子どもが「親の顔も見たくない」と言っても、子どものために家を用意したりはしない。親子の確執があるのも、親子喧嘩ができるのも、継続的な親子関係が保障されているからである。

Q 離婚協議中、子どもを会わせたがっている母親が、離婚が決まりそうになると父親から年に100日の面会を強要されて困った事例がある。共同親権になるとこういった事例が増えるのでは?

A 共同親権の国では、行政や裁判所が養育時間の配分についてひな形を複数用意し、半々の養育時間の配分や、100日~120日の面会交流など複数のプランが選べるように促され、指針となるとともに不合理な取り決めは抑止されている。

<子の連れ去りについて>

Q 子育てはほとんど妻が担っており、こういった場合に子どもを置いて出て行ったら、ネグレクト、育児放棄が起きてしまう。子どもを連れて出るしかないので、「連れ去り」ではないのではないか。

A 子どもを置いて出ていけば育児放棄と批判を受けるのは、子どもといったん離れれば、親権もその後子どもと会う保証もなくなるからである。共同親権で男女平等な子育てになれば、そういった恐れもなくなる。

DVや児童虐待について>

Q 単独親権制度はDVや児童虐待の抑止になっている。共同親権では子どもを連れて被害者が逃げられなくなるのでは。

A この点についてはいくつかの視点から答える。

DVや児童虐待は例外である。

配偶者による暴力(DV)や児童虐待は確かに問題であり、解決すべき問題である。ただ、全ての家庭においてDVや児童虐待が発生している訳ではなく、例外的に起こっている問題であり、男女平等の子育てをする共同親権と同列に扱う問題ではない。

②単独親権制度にDVや児童虐待の抑止効果はない。

単独親権制度のもと、DVや児童虐待の相談件数は年々増え続けており、単独親権制度がDVや虐待の抑止になっているという主張に根拠はない。実際、D

Vは婚姻中の共同親権時に起きているので、単独親権制度とDVの因果関係はない。

③児童虐待は単独親権制度によりステップファミリーの親やひとり親が加害者となるケースが多い。

児童虐待は単独親権のもと、実父母家族よりも、ステップファミリーの親やひとり親が加害者となるケースが多い(中澤香織「家族構成の変動と家族関係が子ども虐待に与える影響」)。子どもの安全への配慮がもっとも適切になされているのは、父母が子どもの養育にかかわっている場合である。

DVや児童虐待の加害者が子どもの連れ去りをすることもある。

単独親権制度のもと、DVや児童虐待の加害者が子どもを連れ去ることもある。

その結果、子どもを引き離すというDVや囲い込んだ子どもへの虐待の継続を促すことになる。

⑤現状のDV支援措置の手続きには不備がある。

愛知県半田市によるDV支援措置により「元妻が捏造した相談でDV加害者として認定され、娘に会えなくなった」ことを訴えた裁判の結果、2020年3月に半田市が謝罪し和解が成立した。このようにDVで無いにも関わらずDV認定をされてしまう現状のDV支援措置の手続きには不備がある。また、DV支援措置により、被害者がシェルターに入ることを勧められ、常勤の仕事を辞めなくてはいけないことから、シェルターに入ることを辞めた被害者もいる。本来、加害者を法的手続きにより制約をすることがあるべき姿と思われるが、現状は行われていない。

これらのように、単独親権制度とDVや児童虐待は無関係である。DVや児童虐待を防止していくためにも、別途、法や運用を見直していく必要がある。

Q 共同親権になると、子どもが虐待される危険が増すのではないか。

A 指摘の根拠はない。現在、虐待の加害者で一番割合が高いのは実母(厚生労働省「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について」)で、例年半分以上の割合を占めている。一方、親権者の85%が女性だが、虐待の加害者のうちひとり親家庭の占める割合は約3割である(全国児童相談所長会「全国児童相談所における虐待の実態調査)2008)。共同親権は母子家庭の孤立を防ぎ、虐待を抑止する効果を持つ。

Q 共同親権に移行した国々では、どのように家族間の暴力に対処しているのか。

A 家族間の暴力でも初期の段階で警察が介入し、暴力抑止のための命令に裁判所も関与する。一方、子の連れ去りも刑事罰の対象である。暴力抑止と安全確保の措置を適切に図ることで共同親権制度との両立を図っている。日本では、家族間暴力への刑事的な介入と、家族間の暴力そのものを無くしていくための支援(共育や回復支援 等)がないので、子の連れ去りが

「自力救済」として容認されている。

Q 個々の親の養育のあり方を第三者が監視する制度がほぼ存在しない現状で共同親権を導入すれば、「子の福祉」が害される。

A 指摘の根拠はない。現在でも、児童相談所が受理する虐待相談件数で、ステップファミリー、ひとり親家庭の件数が実父母家庭の件数よりも明らかに多く、単独親権制度下で子どもへの虐待は起き続けている。子育ての意思がない親、困難を感じる親であっても、養育の義務を果たさせる法制度と、自分の子どもへの配慮ができるようになる支援はすぐにでもなされるべきである。

<その他>

Q 共同親権制度に転換するためには家庭裁判所の予算を10倍にする必要がある。

A 確かに現状の脆弱な司法手続きを考えると、予算を増やす必要があるかもしれない。しかしながら、現状の家庭裁判所の子の監護事件に関する手続きは、ルールもなく非効率である。更に、共同親権によって紛争が抑止されるので、予算を10倍にする必要はない。

Q 家庭裁判所は子どもを養育するのにふさわしい親を親権者にしているし、原則的に面会交流を指示している。単独親権制度で子どもと会える人はいるのだから、共同親権に変える必要はないのではないか。

A 家庭裁判所で親権者の指定を受けるには、子どもを先に確保する必要がある(財団法人日弁連法務研究財団編『子どもの福祉と共同親権』はしがき)。こういったことはすでに知られている。だから男女問わずDVや虐待の加害者も単独親権者になるための連れ去りも続発している。

また、家庭裁判所に「子どもに会いたい」と調停を申し立てても、何らかの取り決めがなされるまで、1~2ヶ月に1回の調停が半年から長ければ2年以上かかる。法律業界の慣行で、調停期間中に親に子どもを会わせない弁護士もおり、そうなると家庭裁判所は無力である。

また、面会交流の申し立てたうち、60%ほどしか取り決めができず、その約4割が守られていない。しかも、その取り決めはよくて月に1回2~3時間である。共同親権にして、もっと多くの親子がともに過ごせるようにしたらどうだろうか。

Q 海外では近年、共同親権は見直される動きになっていると聞いている。

A 共同親権に転換した国で単独親権に戻した国として、オーストラリアの法改正が例に挙げられることがある。

日本とオーストラリアの別居親子の交流頻度の違いは、オーストラリアでは

(小川富之「オーストラリアの離婚後の親権制度」2009~2010年の調査)、毎日・毎週と2週間に1度を会わせると約5割になり、年1回以下若しくは交流しないは25.7%である。3%は平等に子の養育を分担する取り決めをしている。

一方日本では、面会交流の実施率は3割(平成28年度全国ひとり親世帯等調査)、家庭裁判所が指示する交流の頻度は月に1回2時間が一般的である。別居親の養育権が当然のように保障されているオーストラリアのような国の法の修正を、親が別れれば大半の親子が会えなくなる日本と比べて

「共同親権の見直し」と呼ぶのは不適切な表現と言える。

Q 共同親権になると、離婚が増えるのではないか。

A 共同親権への移行後、1、2年以内に、その地域の離婚率は低下する。

(Child Custody Policies and Divorce Rate in the US,Richard Kuhn)。単独親権下では、夫婦仲が悪くなってくれば、相手が用心する前に手を打って子どもを連れ去らないと、離婚交渉で不利になるおそれがある。しかし、共同親権下なら、そのような懸念は杞憂に終わる。

共同親権年表 〜別居親の運動、共同親権運動のこれまで〜

 資料2 共同親権に関わる「子どもの権利条約」と「子どもの権利委員会勧告」

子どもの権利条約(児童の権利に関する条約) 政府訳 −1994年批准

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jido/zenbun.html

第5条

締約国は、児童がこの条約において認められる権利を行使するに当たり、父母若しくは場合により地方の慣習により定められている大家族若しくは共同体の構成員、法定保護者又は児童について法的に責任を有する他の者がその児童の発達しつつある能力に適合する方法で適当な指示及び指導を与える責任、権利及び義務を尊重する。

第9条

  1. 締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。ただし、権限のある当局が司法の審査に従うことを条件として適用のある法律及び手続に従いその分離が児童の最善の利益のために必要であると決定する場合は、この限りでない。このような決定は、父母が児童を虐待し若しくは放置する場合又は父母が別居しており児童の居住地を決定しなければならない場合のような特定の場合において必要となることがある。
  2. すべての関係当事者は、1の規定に基づくいかなる手続においても、その手続に参加しかつ自己の意見を述べる機会を有する。
  3. 締約国は、児童の最善の利益に反する場合を除くほか、父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直

接の接触を維持する権利を尊重する。

第12条

  1. 締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。
  2. このため、児童は、特に、自己に影響を及ぼすあらゆる司法上及び行政上の手続において、国内法の手続規則に合致する方法により直接に又は代理人若しくは適当な団体を通じて聴取される機会を与えられる。

第18条

  1. 締約国は、児童の養育及び発達について父母が共同の責任を有するという原則についての認識を確保するために最善の努力を払う。父母又は場合により法定保護者は、児童の養育及び発達についての第一義的な責任を有する。

児童の最善の利益は、これらの者の基本的な関心事項となるものとする。

  • 締約国は、この条約に定める権利を保障し及び促進するため、父母及び法定保護者が児童の養育についての責任を遂行するに当たりこれらの者に対して適当な援助を与えるものとし、また、児童の養護のための施設、設備及び役務の提供の発展を確保する。

子どもの権利委員会:総括所見:日本(第4~5回) −20192

https://w.atwiki.jp/childrights/pages/319.html

F.家庭環境および代替的養護(第5条、第9~11条、第18条(1)および(2)、第20条、第21条、第25条ならびに第27条(4))

家庭環境

27.委員会は、締約国が、以下のことを目的として、十分な人的資源、技術的資源および財源に裏づけられたあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。

  • 仕事と家庭生活との適切なバランスを促進すること等の手段によって家族の支援および強化を図るとともに、とくに子どもの遺棄および施設措置を防止する目的で、困窮している家族に対して十分な社会的援助、心理社会的支援および指導を提供すること。
  • 子どもの最善の利益に合致する場合には(外国籍の親も含めて)子どもの共同親権を認める目的で、離婚後の親子関係について定めた法律を改正するとともに、非同居親との個人的関係および直接の接触を維持する子どもの権利が恒常的に行使できることを確保すること。
  • 家事紛争(たとえば子どもの扶養料に関するもの)における裁判所の命令の法執行を強化すること。
  • 子およびその他の親族の扶養料の国際的回収に関するハーグ条約、扶養義務の準拠法に関するハーグ議定書、および、親責任および子の保護措置に関する管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関するハーグ条約の批准を検討すること。

資料3 EU議会日本の親による子の拉致の禁止を求める決議プレスリリース

欧州議会、日本におけるEU市民の親からの子の連れ去りに警鐘を鳴らす

Brussels, 08/07/2020 – 20:33, UNIQUE ID: 200709_8

<日本語仮抄訳>

欧州議会議員は、日本の当局が国際法の遵守に消極的であることで、日本において親による子の連れ去り事例が多数発生していることを懸念している。

7月8日(水)、賛成686票、反対1票、棄権8票で採択された決議において、欧州議会は、日本での親による子の連れ去りから生じる子どもの健康や幸福への影響について懸念を表明した。また日本の当局に対して、子どもの保護に関する国際法を履行し、共同親権を認めるよう法制度の変更を行うことを求めている。

国際法の履行

欧州議会は、EUの戦略的パートナーの一つである日本が、子の連れ去りに関する国際的なルールを遵守していないように見受けられることを遺憾としている。また日本の当局に対しては、国内法を国際的な公約や義務にと調和させるため、両親の婚姻関係が解消した後の子の返還や面会・訪問権に関する国内および国外の裁判所の決定を実行するよう求めている。

欧州議会議員は、子どもの最善の利益を守ることを第一に考えるべきであり、また子どもや親権のない親との将来の関係に及ぼす長期的な悪影響を避けるため、子の連れ去りの問題は、迅速に対処する必要があることを強調している。また、国連の「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」において、全ての子どもは、子の利益に反するものでない限り、両方の親との関係や直接的な交流を維持する権利があるとされていることを指摘している。

資料4 民法の家族法・共同親権関連条文

第四編 親族

(協議上の離婚)第763条

夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。

(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)第766条

1.父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。

2.前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。

3.家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前二項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。

4.前三項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。

(親権者)第818条

1.成年に達しない子は、父母の親権に服する。

2.子が養子であるときは、養親の親権に服する。

3.親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。

(離婚又は認知の場合の親権者)第819条

1.父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。

2.裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。

3.子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。

4.父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。

5.第1項、第3項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。

6.子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。

(扶養義務者)第877条

1.直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。

2.家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。

3.前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。

基本政策提言書

2021年民法改正★男女平等子育ての幕開け

〜親子生き別れ!? ひとり親の貧困!? 家庭から社会を変革しよう〜

■著者・発行者

子育て改革のための共同親権プロジェクト

■連絡先

〒103-0027

東京都中央区日本橋二丁目1番17号丹生ビル2階

https://joint-custody.org info@joint-custody.org

050-3479-8403

■作成協力

共同親権運動・国家賠償請求訴訟を進める会

2020年10月26日 初版発行

2021年2月4日 電子版発行

江戸時代、女性も仕事をしていた* * 歌川, 国貞[他] 「花容女職人鑑」/ 国立国会図書館デジタルコレクションより