大田区の3歳女児死亡 母親自身も両親からネグレクトされていた 止められなかった虐待の連鎖

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東京都大田区蒲田の自宅マンションに長女を8日間置き去りにして死亡させたとして、保護責任者遺棄致死の疑いで母親の梯(かけはし)沙希容疑者(24)が警視庁に逮捕された事件は、育児放棄の末、幼い命が奪われた。亡くなった稀華(のあ)ちゃん(3)は部屋に一人っきりで、母が帰ってくるのを待ち続けていたとみられる。

「のんたん」と呼んでかわいがっていた 

母子家庭の2人は、川沿いに立つマンション1階の1DKで3年前から暮らしていた。近くのコンビニ店の女性によると、梯容疑者は娘を「のんたん」と呼んでかわいがり、「仲がいい親子だった」と話す。

捜査関係者によると、梯容疑者が6月13日まで8日間過ごした鹿児島県の交際男性の元から帰宅すると、稀華ちゃんはごみが散乱する6畳居間のマットレスの上で亡くなっていた。

梯容疑者は「お茶やお菓子を置き、豆電球とエアコンをつけておいた」と供述しているが、死因は飢餓と脱水。捜査関係者は「泣いて疲れて、眠って…。それを繰り返し、衰弱していったんだろう」と唇をかむ。

近隣住人、稀華ちゃんの存在すら知らず

部屋の間仕切りは外側からソファでふさがれ、ベランダ側の窓は施錠されていた。捜査員が隣室の声や物音がどの程度聞こえるか実験した際も、ほとんど聞こえなかった。隣人や上の階の住人は、稀華ちゃんの存在すら知らなかった。

梯容疑者は1歳半ごろまで稀華ちゃんを遊園地に連れて行くなどしており、インスタグラムに仲むつまじい様子の写真を載せていた。昨年春ごろ、稀華ちゃんを保育園に通わすのをやめ、同じころ、JR品川駅近くの居酒屋で働き始めた。

勤務中、稀華ちゃんを部屋に一人で残し、仕事後にパチンコに興じて帰宅が深夜の日もあった。勤務先には「他の人が面倒を見ている」と伝えていたという。

3歳児検診を受けず 児相も気づかず

捜査関係者によると、防犯カメラの映像から5月上旬以降、稀華ちゃんを外出させておらず、5月8~11日にも一人で鹿児島に出かけていた。

梯容疑者も小学生の時、実母と養父から身体的虐待や育児放棄を受けて保護され、18歳まで宮崎県内の児童養護施設で過ごした。捜査関係者は「自らも虐待を受けて育ったことで、育児放棄に抵抗感が少なかったのかもしれない」と話す。

3歳児健診を受けさせておらず、児童相談所も育児放棄を把握していなかった。防ぐことができなかった虐待の連鎖。コンビニ店の別の女性は「もっと周囲に頼ったり相談したりしていれば、事件は防げたかもしれない」と声を落とした。