
「実子誘拐ビジネス」の闇 ハーグ条約を“殺した”人権派弁護士たち|池田良子
人権派弁護士が「実子誘拐」を指南 本年3月24日の参議院法務委員会で、驚くべき事実が報告された。 2018年5月15日、パリにおいて、外務省と日本弁護士会が「国際結婚に伴う子の親権(監護権)とハーグ条約セミナー」を開催し、実子誘拐を指南したというのだ。 ハーグ条約とは、正式には「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」と言い、国際的な実子誘拐問題を解決するため、子どもの元居住国への返還手続や親子の面会交流の実現などについて定めたものである。日本は2014年に加盟している。 このセミナーにおいて、日弁連から派遣された芝池俊輝弁護士が、フランス在住の日本人(主に母親)に対し、ハーグ条約について講演した。 芝池弁護士は、国連子どもの権利委員会委員の大谷美紀子弁護士とともに「国際人権法実践ハンドブック」を書くなど、「人権派弁護士」として広く知られる人物。 その人権派弁護士がパリで話した内容が、参加者によりすべて録音されていた。その録音内容を聞くと、「ハーグ条約の趣旨に沿い、子どもを第一に考え、夫婦できちんと離婚後のことを話し合いましょう」と諭す内容ではまったくない。「いかにハーグ条約の適用を受けずに、日本に子を連れ去るか」という子どもの権利を侵害する手法を具体的に指南するものだった。 たとえば、こんな調子である。 「皆さん、知りたいのは、いざ日本に帰った場合に、そのまま仮にハーグ条約を(盾に訴えを)起こされても、戻さなくて済むんじゃないかと……これから少し話をしたいと思います」 「私、もうこれで、全部返還拒否事由が満たされません。どれもダメでした。じゃあ、仮に日本で裁判起こされたら絶対返還ですかというと、そうではありません。……いい取り決めをして、戻るなり戻らないってことをしていく、というのが日本の裁判所、日本のハーグの事件の特色なんです。……諦める必要はありません」などと述べている。 どうやれば「実子誘拐」ができるのか 45条のハーグ条約のなかで、子の返還拒否事由が規定してあるのは2条ほどである。そのことから明らかなとおり、返還拒否は条約の主眼ではない。極めて例外的な特殊事情がある場合にのみ認められるものだ。実子誘拐を防止するための条約なのだから当たり前である。 にもかかわらず、芝池弁護士は、その極めて例外的な場合にしか認められないはずの規定の適用を受けるためにどうすべきか、延々と30分説明したのである。「実子誘拐指南」と言われても仕方がないだろう。 では、どうやれば「実子誘拐」ができるのか。以下、芝池弁護士の説明を引用する。 「条文を簡単に見ておくとですね、条文、ここは大事なので見ておきましょう。……28条ってのがあります。28条ってのが返還拒否事由なんですね。ここに書いてあるようなことがあれば子供を戻さなくてもいいですよ、っていう条文です」 「で、この28条……を見ると、“常居所地国に子を返還することによって、子の心身に害悪を及ぼすことその他子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険があること”と書いてますよね。……これだけ見ると、別にお母さんへのDVって入ってないわけですけれども……“相手方及び子が常居所地国に入国した場合に相手方が申立人から子に心理的外傷を与えることとなる暴力等を受けるおそれ”って書いてあります。 相手方って、これお母さんです。皆さんのことです。相手方です。ハーグ条約をされる相手です。連れて帰るほうです。相手方と子どもが、もしフランスに今後戻ってきた場合に、夫のほうの申立人から、子どもに影響があるような暴力を受けることがあるかどうかっていうことが一つの判断要素になります、って書いてあるんです」 ハーグ条約の条文を読んだことがある人であれば、この芝池弁護士の説明に疑問を持つはずである。なぜならば、ハーグ条約には、返還拒否事由として、配偶者暴力(DV)については一切規定がないからだ。 ハーグ条約に日本が仕掛けた罠 ハーグ条約は、あくまでも子どもの利益を第一に考える条約である。 したがって、夫婦の関係は子どもの返還の決定に無関係。夫婦の一方が不貞行為をしていたかどうか、配偶者暴力をしていたかどうかは関係ない(仮にDVがあったとしても、夫婦が別居して共同養育にすれば問題は解消されるのであり、いずれにせよ返還拒否事由になり得ない)。子どもに対する暴力のみが考慮される。 ハーグ条約の第13条の「返還することによって子が身体的若しくは精神的な害を受け、又は他の耐え難い状態に置かれることとなる重大な危険があること」という規定がそれである。 子が心身に害悪を受ける状況とは、たとえば児童虐待を受けている場合であり、耐え難い状態とは、たとえば元住んでいる国が戦争状態になっている場合などである。このように、ハーグ条約は明らかに子の利益が害されると認められる場合にのみ返還拒否を認めている。 しかし、日本はハーグ条約締結後、条約を実施するための国内法(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律)を作る際に細工をした。 なんと、ハーグ条約第13条がまったく想定していない「DV」を返還拒否事由に入れてしまったのだ。







